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ノビル/のびる/野蒜
No-biru
【ノビルとは】
・北海道~沖縄の各地に分布するヒガンバナ科の多年草。日向を好み、山野、土手、田畑の畔、路傍など至る場所に自生するがネギの仲間であり、早春の山菜として知られる。
・「蒜(ひる)」はニンニク、ネギ、ニラなどを総称する古い名で、噛むと口がヒリヒリすることに由来。全草に特有の臭いがあり、野山に自生するためノビルと名付けられた。日本以外でも朝鮮半島、中国及び台湾に自生が見られる。
・ノビルの開花は5~6月。花茎は直立して高さ60センチほどに達し、その先端に薄い紫色を帯びた白い小花が球状に集まって咲く。花被片(花弁と萼)は長さ4ミリほどで6枚あり、6個ある雄しべは外側へ突き出す。
・蕾はニラやネギと同じように袋状の「苞」に包まれているが、開花せずムカゴ(珠芽)にとどまり、秋に落下、発芽することも多い。ノビルは繁殖力が高く、このムカゴや地下茎によって増殖する。
・葉は細長い線状で肉質。平たいが中空で断面は半円~三日月となり、縦に浅い筋が入る。葉は茎の下部から2~3枚が互い違いに生じるが、垂れ下がって地面にへばりつくものも多い。茎は淡い緑色で表面に白粉を帯び、これも中空になる。
・鱗茎(地下にある根の塊)は直径1~2センチで、白い膜質の外皮に覆われる。食用になるのは4~5月に採取した若芽と鱗茎で、麺類の薬味、酢味噌和え、御浸し、ぬた、雑炊、天婦羅、油炒めなどにして食べる。鱗茎は辛味があり、生のまま味噌をつけて食べてもおいしい。ニンニクがなかった平安時代以前は調味料として重宝されたという。
・ノビルは全草が薬用となり、擂り潰した鱗茎や葉の汁を扁桃腺炎、虫刺され、疥癬、水虫、タムシなどに塗布すると効能があるという。また、強精や健胃目的に内服する民間療法もある。
【ノビルに似た植物】
・アサツキ
北海道~四国に分布する近縁種で、ノビル同様、葉を強壮に使う。葉はノビルと違って円筒形で屹立し、6月頃、淡い紫の花を咲かせる。ノビルと似た場所に生えるが、全体にネギを小さくしたような草姿であり、ノビルと見分けられる。
北海道~奈良県に分布する近縁種。葉は幅広の長楕円形で、白い花を咲かせる。鱗茎は細長い楕円球で、山の行者が強壮に用いたためギョウジャニンニクと呼ばれる。
・ヤマラッキョウ
やや乾燥した山地に見られる近縁種で、紅紫色の花を咲かせる。
ノビルの基本データ
【分 類】ヒガンバナ科
ネギ亜科ネギ属
多年草
【漢 字】野蒜(のびる)
【別 名】ヤマビル(山蒜)
ノビロ/アララギ
ネビル(根蒜/沢蒜)
コビル(小蒜)/ノノヒロ
ステコビロ/アサツキビル
【学 名】Allium macrostemon
【英 名】No-biru
【開花期】5~6月
【花の色】白紫
【草 丈】~40cm