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ナンバンギセル/なんばんぎせる/南蛮煙管
Aeginetia
【ナンバンギセルとは】
・日本各地の草地に分布するハマウツボグサ科の寄生植物。イネ科植物(ススキ、オギ、サトウキビ、モウソウチク、ウラハグサ等)やミョウガ、シランなどの根元に育ち、夏~秋に多肉質な花を咲かせる。花の形を南蛮由来の煙管(きせる=パイプ)に見立ててナンバンギセルと名付けられた。
・母種はマレーシアやインドに分布し、アジア東部、南部の熱帯から温帯に広く見られる。日本に育つのは在来種であり、万葉集にも「オモイグサ」として登場。古くから親しまれる秋の植物だが、環境の変化による宿主の減少と共に、ナンバンギゼルの数も減っている。
・茎のように見えるのは花柄であり、ごく短い本来の茎は地中にあることが多い。葉は赤褐色をした三角形の鱗片状で長さは1センチ弱。数枚が茎から互い違いに生じるが、これもほとんど地上に姿を現さない。茎葉とも無毛で硬いキノコのような質感。民間療法では強壮に用いる。
・開花は7~9月。葉の脇から伸びる15~25センチの花柄の先端に、クマガイソウのような色合いの花を一輪ずつ横向きに咲かせる。草陰でひっそりと咲く様子を、物思いに耽る人になぞらえたのがオモイグサという別名。
・花は長さ3~5センチの筒状。先端は五つに浅く裂けて唇形になり、その縁は丸みを帯びる。萼は長さ2~3センチの舟形で下方は基部まで裂け、背面には淡い紅紫の筋模様が入る。花を覗き込むと柱頭が黄色い雌しべは見えるが、4本ある雄しべは花冠の壁面にへばりついており観察しにくい。
・果実は直径1~1.5センチの小さな長楕円球で、萼に包まれたまま上を向いて熟す。内部に粉状の種子を多数含むが、これをミズゴケや脱脂綿に包んでススキ等の根元に埋め込むと容易に発芽する。
・ナンバンギゼルは光合成に必要な葉緑素を持たず、寄生した植物から取り入れた栄養分だけで育つ「完全寄生植物」であり、自分でも光合成を行うヤドリギなどとは異なる。
【ナンバンギセルに似た植物】
・オオナンバンギセル
北海道と沖縄を除く各地の深山に見られる近縁種。ススキ、シバスゲ、ヒメノガリヤスなどに寄生し、文字どおりナンバンギゼルよりも大形になる。花冠は長さ5センチほどで、より大きく開き、花柄も太い。また、花冠の裂片に細かなギザギザがあることや、萼の先端が尖らず筋模様がないこともナンバンギゼルとは異なる。
ナンバンギセルの基本データ
【分 類】ハマウツボ科
ナンバンギセル属
一年草
【漢 字】南蛮煙管(なんばんぎせる)
【別 名】オモイグサ(思草)
ヤマナンバンギセル
アズキクサ/アズキナ
ヨダレクイ
【学 名】Aeginetia indica
【英 名】Aeginetia
【開花期】7~9月
【花の色】赤紫色と白
【草 丈】~25cm