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ナズナ/なずな/薺
Shepherd's purse
【ナズナとは】
・北海道から沖縄まで日本全国に分布するアブラナ科ナズナ属の二年草。日当たりの良い道端、田畑、野原などで普通に見られる典型的な「雑草」で「雑草の女王」とも称されるがが、セリ、オギョウ(ハハコグサ)、ハコベラ(ハコベ)、ホトケノザ(コオニタビラコ)、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)と共に春の七草に数えられ、古来から若菜を食用とする。
・日本に生えるナズナは在来種だが、ナズナの仲間4種が北半球の温帯に広く自生する。果実の形を巾着(きんちゃく)に見立てる国が多く、英語、ドイツ語、フランス語のいずれにおいても「羊飼いの財布(小銭入れ)」を意味する名前が付けられている。漢名は「薺(せい)」で、日本でも「薺の花」を春の季語としている。
・ナズナという名前の由来には諸説あるが、夏になると枯れてなくなることを意味する「夏無」、あるいは越冬するロゼットの姿が撫でたくなるほど可愛いことを意味する「撫菜」などが転訛したとする説、本種で身体を撫でて穢れを落としたという古代の呪術に由来するという説が知られる。
・別名「ペンペングサ」も有名だが、全国に分布するため、ガラガラ、バチグサ、ヂヂノキンチャク、ババノキンチャク、スズメノダラコなどの地方名もある。「ペンペングサ」については、摘み取って茎を回転させるとペンペンと音が鳴ることによると思い込んでいる人が多いが、本来は実の形を三味線のバチに見立て、三味線の音を想起させるものとして名付けられた。このためシャミセングサという呼名もある。
・ナズナは冬至の頃に地際から「根生葉」を生じ、地面に張り付いて越冬する。春になると根生葉の中心から分岐させた茎を伸ばし、高さ10~50センチになる。根生葉は羽根のように細かく裂けることが多いが、初期に出る葉は切れ込みが少ないなど変化も多い。春以降に茎から出る葉は小さく、茎を抱くように生じる。
・開花期は3~6月だが、暖地では年末に咲くことも。茎先から多数伸びた花柄に下から順に咲き、蕾を作りながら上方へどんどんと伸びていく。花は直径2~2.5センチで小さいながらも4枚の花弁があって十字型になり、その中央には6個の雄しべと1個の雌しべがある。「ナズナ」は新年の季語だが、「ナズナの花」は春の季語。
・根は太いものが真下へ伸び、わずかに側根がある。柔らかな土を好むため荒れた畑に特に多いが、「ペンペングサも生えない」と表現されるほど丈夫な性質は「雑草の女王」とされ、雨樋や茅葺屋根の上に生じることもある。「ビンボウグサ(貧乏草)」という俗称は、屋根を張り替える金がなくて放っておくと本種がはびこることに由来する。
・食用するのは開花前に少しだけ伸びた頃の花茎と若菜。特有の香りがあり、七草粥はこのナズナの香りを特徴とするが、クセやアクはほとんどなく、サッと茹でたものを水にさらし、胡麻和え、天婦羅、塩漬けなどにして食べる。現代のように十分な野菜がない時代、ナズナは冬の貴重な青菜であり、宮中でも汁物や漬物にして食していた。
・中国最古の薬物に関する書物である「神農本草経」では、ナズナの薬効について「精神的要素の気を補い、瞳の光を益す作用を持つ。」と記している。全草にコリン、アセチルコリン、フマール酸を含み、近代の民間療法でも日干ししたナズナを煎じたものをガーゼに含ませるなどして洗眼すれば痛みや充血を緩解し、飲用すれば便秘や利尿の作用があるとする。
【ナズナの種類】
・グンバイナズナ
ナズナの外来種。果実の先端が深くへこみ、相撲の行事が持つ軍配のような形になる。
・マイグンバイナズナ
グンバイナズナに似るが、果実の先端の窪みが浅い。
・イヌナズナ
黄色い花が咲き、果実は扁平した楕円形で、表面に短毛が生じる。茎葉がナズナに似るが食用にならず、本物のナズナとは異なるという意味合いでイヌナズナと名付けられた。
・シロイヌナズナ
白い花を咲かせるが、果実はイヌナズナよりも細長い円柱状に
【ナズナに似た植物】
・スイートアリッサム
ニワナズナあるいはニオイナズナとも呼ばれる園芸植物。地中海沿岸を原産とする別属の植物で花に香りがあり、春花壇の縁取りなどに多用される。
ナズナの基本データ
【分 類】アブラナ科/ナズナ属
二年草(越年草)
【漢 字】薺/奈都奈/奈都那
(なずな/なづな)
【別 名】ペンペングサ/ガラガラ
バチグサ/ヂヂノキンチャク
ババノキンチャク/ニワハヅキ
スズメノダラコ/ビンボウグサ
シャミセングサ
【学 名】Capsella bursa-pastoris
【英 名】Shepherd's purse
【開花期】3~6月
【花の色】白
【草 丈】~50cm