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スイセン/すいせん/水仙
Japanese narcissus
【スイセンとは】
・スイセンは、ヒガンバナ科スイセン属の多年草の総称で、北アフリカ、西アジア~ヨーロッパの地中海沿岸を原産とする。自生種は30~50種だが古くから品種改良が盛んに行われ、今ではなんと1万を超える品種があるとされる。
・日本ではラッパスイセン、キズイセン、キブサズイセン、クチベニスイセン、ジャノメスイセン、タマスイセンなど100を超える品種が栽培されるが、一般的にスイセンという場合はニホンズイセンを示す。スイセンは漢名「水仙華」に由来。室町時代の漢和辞典に初めて「水仙」の文字が見られ、足利将軍にも献上された記録が残る。
・ニホンズイセンは、地中海沿岸地方を原産とするフサザキスイセンの変種で、平安時代末期~室町時代に中国大陸を経て渡来したものが野生化した帰化植物。関東地方南部から九州各地の海岸近くや日当たりの良い草地、斜面に分布するが栽培が簡単であるため花壇などにも使われる。
・スイセンが海辺に多いのは、海流に乗って漂着した鱗茎(根)が繁殖するため。房総半島、淡路島、福井県の越前海岸は「日本水仙三大群生地」として知られ、福井県はニホンズイセンを県の花に指定している。
・開花は11~4月で、葉の間から伸びた鉛筆のような花茎の先端に、直径2~4センチほどの花が5~8輪、横向きに咲く。白い花弁が6枚あるように見えるが、本物の花弁は内側の3枚で、残りは萼片が花弁のようになったもの。中央にある黄色いカップ状の部分は副花冠と呼ばれ、スイセン属を特徴付けている。
・花は一重咲きが原則だが、八重咲きや花が黄色一色、クリーム一色、白一色になる品種もある。スイセンの花は香りがよいというイメージを抱きがちだが、花の香りは品種によって様々で、中には便のような悪臭を放つ品種もある。
・スイセンは他の花が少ない寒い時季に咲くことなどから、めでたい花とされ、昔から正月用の切花に使われる。「三清」(タケ、ウメ、スイセン)、「三君」(ウメ、ジンチョウゲ)、四清(タケ、ウメ、キク、スイセン)と呼ばれて珍重され、セッチュウカ(雪中花)という美しい別名もある。
・開花期以外にスイセンが目立たないのは、ヒガンバナと同様に花だけではなく葉も限られた期間のみ生じるため。葉は初冬、地下にある鱗茎から4~6枚が直接生じ、長さ30~40センチになる。ニラに似た帯状で細長く、質が厚く、表面はやや白みがかった緑色になる。
・スイセンにちなんだ伝説や神話は多いが特に有名なのは、泉の水面に映った自分の姿に恋した美少年ナルキッソスが溺死し、スイセンに成り変わったというギリシャ神話。この話がシルクロードを経由して中国に伝わり、中国では美少年が仙人に差し替えられた結果、「水仙」になったという。
・スイセンの花言葉は、上記の神話にちなんで「自己愛」「うぬぼれ」「エゴイズム」「神秘」などであるが、スイセンは果実ができず、鱗茎の株分けで増やすことや毒があることを考え合わせると興味深い。
・地中にある鱗茎は鶏の卵くらいの大きさのタマネギ型で、黒い皮に覆われる。これを擂り潰したものは乳腺炎などの腫物、肩こりに効くという民間療法がある。ただし、球根と葉にはリコリン、タゼチンという有毒成分を含み、汁液に触れると皮膚炎を起こし、誤食すれば嘔吐、下痢、胃腸炎、頭痛などを引き起こす。場合によっては生命に関わる事態を招くこともあるため取扱いには注意する必要がある。
【スイセンの品種】
スイセンの基本データ
【分 類】ヒガンバナ科/スイセン属
多年草
【漢 字】水仙(すいせん)
【別 名】ニホンズイセン
早咲きニホンスイセン
【学 名】Narcissus tazetta
【英 名】Narcissus/Daffodil
【開花期】12~3月
【花の色】白、黄色
【草 丈】~50cm