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サクラソウ/さくらそう/桜草
Japanese primrose
【サクラソウとは】
・北海道南部(日高地方)、本州、四国及び九州に分布するサクラソウ科の多年草。日本を代表する花の一つであり、かつては山野の低湿地や平地の河川敷にも見られたが、近年その個体数は減っており、各地で保護活動が行われている。
・サクラソウ属の植物は北半球の各地に自生し、その品種は極めて多い。「サクラソウ」をサクラソウ属の総称として用いる場合もあるため、日本に自生するサクラソウをニホンサクラソウ、クサザクラ、ノサクラソウ、その他をセイヨウサクラソウと呼んで区別することもある。園芸用に流通するプランターなどの鉢植えは、セイヨウサクラソウ(=プリムラ)が多い。
・サクラソウという名は花冠(花弁)の先がサクラのようにくぼんでいることにちなむが、常磐桜、乙女桜、化粧桜、雛桜など風流な別名もある。変異や園芸品種が多く、花冠の色や形、切れ込みの入り方は多様で時にコレクションの対象となる。
・日本に自生するサクラソウは10数種類で、かつては東京近郊でも荒川/入間川流域(尾久、浮間、戸田など)に自生していたが、開発や乱獲によって昭和20年代以降にその多くが絶滅した。唯一、自生が残る田島ヶ原(さいたま市)は国の特別天然記念物であり、埼玉ではサクラソウを県の花に指定している。
・サクラソウの栽培が注目されるようになったのは江戸時代のことで、将軍家が江戸城に移植させたことによる。武士の間でも栽培が大流行した。現在は300種ほどが認定されているが、江戸の最盛期には700以上の品種が編み出されたという。数多い植物の中でも特にサクラソウが注目されたのは、江戸城近くに自生地があったことやサクラソウ自体に天然の変異が多いことによる。
・開花は4~5月で自生種の花色は紅紫が多いが、園芸品種は紅紫、白、ピンクを基本に変化に富む。花の直径は2~5センチほどで花冠(花弁)は大きく五つに裂け、さらにそれぞれの裂片が二つに浅く裂ける。花茎は葉よりも長く15~40センチになり、7~20輪が放射状に並ぶ。
・サクラソウの花には雌しべが雄しべよりも長いタイプのものと、雌しべが雄しべの中に埋没している二通りのタイプがあり、これによって自家受粉が抑えられている。萼は花の筒よりも短く、これも五つに裂ける。果実は直径5ミリほどの楕円形で、原種は結実しやすい。
・葉は全て株元から生じる「根生葉」で多数が四方に開帳する。長さ4~19センチ、幅3~6センチで全体としては大きな楕円形だが、縁には浅い波状の切れ込みがあり、表面はシワシワで細かな毛を生じる。
・茎葉、花柄、萼には多細胞の白い軟毛が密生するが、セイヨウサクラソウや中国産で四季咲き性のトキワサクラソウの軟毛には毒性には毒性があり、触れると皮膚炎を起こすことがある。
・根茎は短く、多数のヒゲ根を出しながら横に這う。漢方では桜草根(おうこんそう)」といい、民間療法では乾燥させた根を煎じたものを咳や痰を鎮めるのに用いる。
【サクラソウに似た草花】
・ユキワリソウ
・シバザクラ(ハナツメクサ)
【サクラソウの品種】
サクラソウの基本データ
【分 類】サクラソウ科/サクラソウ属
多年草
【漢 字】桜草(さくらそう)
【別 名】ニホンサクラソウ/クサザクラ
ノサクラソウ/常磐桜
乙女桜/雛桜/化粧桜
セイヨウサクラソウ
プリムラ
【学 名】Primura sieboldii E.Morr
【英 名】Japanese primrose
【開花期】4~5月
【花の色】白、紅紫、ピンクなど
【草 丈】~30cm