ビロウ/びろう/蒲葵
Chinese fan palm
【ビロウとは】
・四国南部、九州及び沖縄に分布するヤシ科の亜熱帯性常緑高木。海岸沿いにある林内及び林縁に自生するが、南国風の葉や樹形が好まれ、暖地の公園や街路、庭園に植栽される。
・ビロウは日本以外でも亜熱帯、熱帯アジアに広く分布するが、東南アジアに分布するビンロウジュと混同され、ビンロウジュの漢名「檳榔」の音読みが転訛し、ビロウと呼ばれるようになった。
・数少ない日本のヤシの一種であり、自生地である宮崎県の青島と高島、鹿児島県の枇榔島などの群落は、天然記念物に指定される。かつては佐賀、三重、和歌山などにも自生していたが、乱伐によって絶滅した。
・葉は直径1mほどの円形で手のひら状に深く裂け、葉の中程からさらに二つに裂けて垂れ下がる。光沢のある緑色でシュロに似るが、葉先はより長く垂れ下がる。
・ビロウの葉柄は長さ1~2mほどで断面は三角形。両縁に逆向きのトゲを持つのが特徴だが、若い葉柄ほどトゲは鋭く、成葉では消滅する。葉は幹から互い違いに生じて密生し、扇形あるいは半円形に広がる。意外にも若芽は食用になるという。
・大きな葉は屋根材となり、漂泊したものは団扇、笠、傘、扇、帽子などの細工物に使われる。平安~室町時代に身分の高い者の乗物であった「檳榔毛車(びろうげの車)」、「檳榔庇車(びろうひさしのくるま)」は、ビロウの葉で屋根を葺いた牛車のこと。また、天皇が禊のために籠る百子帳にもビロウが使われる。
・ビロウの開花は4~5月。花序は幹の先端に近い葉の基部から横向きに伸び、長さ1mにもなる。花はクリーム色で直径4ミリほど。多数が円錐状に集まって咲くが全て両性花で、花弁と萼が3個、雄しべは6個で、雌しべが1個ある。花には特有の香りがあり、熟すと花序ごと垂れ下がる。
・花の後にできる果実は直径1~3センチの楕円球。10~11月に熟すと表面は金属のような光沢のある黒緑色になる。中に含まれる種子は黒く、ほぼ球形。
・幹は1本で枝分かれせず、年輪もない。先端が伸び続けて樹高8~20m、直径30~60㎝になり、成木の樹皮には灰褐色をした環状の紋様が不規則に生じる。
【ビロウの育て方のポイント】
・寒さに弱いため自生地以外では観葉植物として屋内で育てるのが普通。亜熱帯、熱帯の日向であれば地植えでも育てられる。
・東南アジアでは樹高20mにもなるが、四国や九州では樹高5mほどにとどまる。樹齢は長めであり、日本でも樹齢300年という個体がある。
・古い葉はシュロなどと同様に垂れ下がり、樹形は長楕円形になる。通行の邪魔になる場合、根元から切除できるが、葉は年い数枚ほどしか生じない。
【ビロウの品種】
・ビロウとその近縁種は東南アジアやオーストラリアを中心に約30種分布するが、日本ではオガサワラビロウが知られる。オガサワラビロウは葉柄にほとんどトゲがなく、ビロウよりも大きな果実ができる。果実の中は上半分に胚があり、ビロウとは異なる。
ビロウの基本データ
【分類】ヤシ科/ビロウ属
【学名】Livistona chinensis
var.subglobosa
【別名】クバ(蒲葵)/コバ
ビロウヤシ
アジマサ(阿知未佐/阿遅摩佐)
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【用途】公園/街路樹/鉢植え
【値段】9000円~