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ユリノキ/ゆりのき/百合の木
Tulip tree
【ユリノキとは】
・アメリカ中部及び東部(アパラチア山脈)を原産とするモクレン科の落葉樹。大きな枝を整然と広げる姿が美しく、街路樹や公園樹として各地に植栽される。日本に渡来したのは明治初頭のことで、移入された種子を新宿御苑等に播いたのが始まりとされる。
・ユリノキの開花は5~6月。花はチューリップのような形で、別名をチューリップツリーというが、高い位置で上向きに、しかも葉と葉の間に隠れるように咲くため、あまり人目につかない。
・ユリノキという名は学名「Liriodendron」の訳語。これはギリシア語のユリ「Lirion」と樹木「dendron」を合成したもので、花の構造がユリに似ることによる。
・花はまったくユリっぽくないが、ユリノキが渡来した頃はチューリップが一般的ではなく、より馴染みのあるユリをそのまま和名にしたとされ、大正天皇が皇太子の頃に小石川植物園で本種を見て命名したという説もある。
・アメリカでは花の色からイエローポプラと呼ばれることもあり、インディアナ州の州花となっている。花弁にあるオレンジ色の部分から蜜を生じ、原産地ではハチミツの蜜源となる。
・ユリノキの花弁は9枚あるが、外側の3枚は萼のように水平に開き、その先端は内側に巻く。内側の3枚はレモンイエローで基部にオレンジ色の模様が入り、先端は反り返る。花の中央に多数の雌しべと雄しべを生じるが、雄しべの葯(花粉入れ)は2センチもある。
・花の後には枯れた蕾のような果実ができる。果実は翼のある種子(翼果)が松笠状に合体した集合果。11~12月に熟すと内側から順に砕け始め、外側部分だけがコップのように残る。
・葉は直径15~25センチほどで4~6つに浅く裂け、硬くて長い柄がある。職人が身にまとう半纏(はんてん)、あるいは乳児を寝かしつける時に使う「ねんねこ半纏」に似ているとし、ハンテンボクいう別名がある。葉は秋になると一早く黄葉して人目を惹く。
・原産地のアメリカでは樹高60mにも達するが、台風の多い日本では30mほどにとどまる。幹の直径は1mを超すような大木になるが、材は柔軟かつ軽量で加工しやすく、楽器、建材、造船、家具の引き出しの内張、ベニヤ板(アメリカホワイトウッドと称する)などに利用される。
・ユリノキが初めて街路樹として使われたのは明治43年のことで、場所は赤坂離宮(現赤坂迎賓館)。当時の宮内省が洋風建築に合う樹種として選定したもので、現在でも四ツ谷駅から大木となった並木が続く。
【ユリノキの育て方のポイント】
・日当たりが良く、肥沃な土地を好む。乾燥にはやや弱い。植栽の適地は北海道中部以南。
・病害虫に強いが、花はカラスをはじめとした鳥獣の被害に遭いやすい。
・街路樹に用いられることが多いが、葉の面積が大きいため風に弱いという欠点がある。また、大きく育つものの剪定を嫌い、無理な剪定で枝を枯らすことがある。広いスペースで伸び伸びと育てたい。
【ユリノキの品種】
・斑入りユリノキ
ユリノキの園芸品種で、葉に模様が入る。明るい雰囲気になるためより好まれるが、流通は稀。
・シナユリノキ
1875年に中国の廬山で発見された樹種。花はユリノキよりも小さく、花弁は長さ3~4センチほど。内側は黄色いが外側は緑色が濃く、ユリノキのようなオレンジの模様は入らない。樹高が15m程度にしかならないのもユリノキとの違い。
・ユリノキ リトルポーター
いわゆる矮性の品種で画像のとおり葉が小さいが、順調に育てば樹高は10mほどになる。
ユリノキの基本データ
【分類】モクレン科/ユリノキ属
落葉広葉/高木
【漢字】百合の木(ゆりのき)
【別名】ハンテンボク/イエローポプラ
チューリップツリー
チューリップノキ
ヤッコダコノキ
グンバイノキ/レンゲボク
【学名】Liriodendron tulipfera
【英名】Tulip tree
【成長】早い
【移植】やや難しい
【高さ】10~30m
【用途】街路樹/公園/洋風庭園
【値段】2000円~