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モクレン/もくれん/木蓮
Lily Magnolia
【モクレンとは】
・中国の中部~南東部を原産とするモクレン科の落葉樹。平安時代後期(諸説あり)に薬用目的で渡来し、後に観賞用として寺院などに植栽されるようになった。花には圧倒的な存在感と気品があり、現代でも庭園や公園で普通に見られる。
・漢名は「玉蘭」あるいは「辛夷」だが、かつては「木蘭」と表記し、平安時代にはその音読みから、モクラニ(毛久良爾)あるいはモクランと呼んでいた。江戸時代に本種の栽培が広まると、花がハス(蓮)に似るとして、モクレンと呼ばれるようになった。
・日本では白い花が咲くハクモクレンをより多く見かけるが、モクレンとハクモクレンは別物。モクレンは樹高3~6m程度にとどまるが、ハクモクレンは10mを越す大木となり、両者を区別するため本種をあえてシモクレン(紫木蓮)と呼ぶことが多い。なお、ハクモクレンはコブシと混同されやすい。
・開花は3~4月でハクモクレンより半月ほど遅く、新葉の展開に先立つか、ほぼ同時。蕾はどれも南側から膨らみ、同じ方向を向いて並ぶ。花は枝先で一輪ずつ上向きに咲き、花弁は日が当たると開くが、多くの場合は花弁が開ききらず、卵が立ち並ぶようになるのが特徴。本種(シモクレン)の花の下には小さな葉があるが、ハクモクレンにはない。
・花弁は6枚で長さは10センチほど。その基部には緑色をした小さな3枚の萼があり、多数の雄しべと雌しべがある。花弁の色は外も中も紅紫になるもの、内側だけが白みを帯びるものなど品種や個体によってバリエーションがある。
・花の後にできる長楕円形の果実は、袋状の果実の集合体。秋に熟すと自然に裂け、艶のあるオレンジの外種皮に包まれた種子が、白い糸状の柄に垂れ下がる。
・葉は長さ8~18センチの卵形で、枝から互い違いに生じる。葉の先端はわずかに突出し、縁にギザギザはない。革質でやや硬く、表面はシワシワ。裏面は葉脈に沿って細かな毛を生じる。
・幹は地際近くで分岐し、株立ちの低木状になるのが普通。ハクモクレンのような大木にはならず、放置しても樹形は整いやすい。樹皮は灰白色で滑らか。樹皮と蕾を薬用とし、漢方では乾燥させた蕾(しんい=辛夷)を蓄膿症や鼻炎に用い、中国では花弁を食用する。
・モクレンは18世紀末に欧米へ渡り、マグノリアとして親しまれる。多くの品種が欧米で栽培されるが、園芸品種として特に人気なのは、ハクモクレンとの交配種である「アルバスペルバ」「レネイ」「ニグラ」「プロッツォーニ」など。
【モクレンの育て方のポイント】
・寒さに比較的強く、北海道でも植栽できる。ただし、開花後に降雪があると花弁が茶色くなりやすい。
・日当たりを好む「陽樹」であり、日陰では育ちが悪い。
・湿気のある肥沃な土地を好むが、あまり土質を選ばない。
・株立ち状に育ち、枝分かれも多いが剪定は好まない。強度の剪定は樹勢が衰える原因となる。冬季に不要な枝を付け根から切除する程度にとどめるのがベター。
【モクレンの品種】
・トウモクレン(唐木蓮)
名前のとおり中国を原産とする品種。葉や花がモクレンより小さいため、ヒメモクレンという別名があり、樹高も3mほどにおさまる。モクレンの花弁は内側も紫だが、トウモクレンは花弁の内側が白っぽく、先端が尖っている。
・キンジュ(金寿)
クリーム色の花を咲かせる。
・エリザベス
大きなクリーム色の花を咲かせる。
・イエローリバー
小さめの黄色い花が長く咲く。
・アレキサンドリナ、サラサモクレン
ハクモクレンとの雑種
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モクレンの基本データ
【分類】モクレン科/モクレン属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】木蓮/木蘭(もくれん)
【別名】シモクレン(紫木蓮)
モクレンゲ(木蓮華)
【学名】Magnolia quinquepeta
【英名】Magnolia
【成長】普通
【移植】普通(根は粗い)
【高さ】3~6m
【用途】公園/街路樹
シンボルツリー
【値段】2000円~