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ムクロジ/むくろじ/無患子
Soapberry tree
【ムクロジとは】
・茨城県及び新潟県以南の本州、四国、九州及び沖縄の山地に分布するムクロジ科の落葉高木。新緑や黄葉、落葉期の果実の様子など季節の変化に富み、薬効や魔除けの霊力を持つ木としても伝えられ、寺院や神社を中心として観賞用に植栽される。日本以外では中国大陸南部、台湾、ミャンマー、インドなどに分布。
・葉は長さ7~18センチ、幅3~5センチほどの小葉が4~8対集まって30~70センチの羽根状になり、放射状に広がる。小葉は長楕円形で縁にギザギザはなく、基部が左右非対称になる特徴を持つ。
・ムクロジの開花は6~7月。淡い黄緑色をした小花が、長さ20~30センチの穂状に集まって咲く。小花は直径4~5ミリほどで花弁は5枚。花には雌雄あるが一本の木に両方咲く雌雄同株で、開花期には蜂を中心にたくさんの虫が集まる。
・花の後にできる果実は直径2~3センチほどの扁平した球形。10~11月頃には黄褐色に熟すが、落葉後も茶色くなってしばらく枝に残る。果皮や果汁にムクロジサポニンという物質を含むため食用にはならないが、ネズミなどの野生動物はこれを溜め込んで食糧にする。
・果皮は生薬名を「延命皮」といい、水に入れると泡立つため、昭和初期まではサイカチやエゴノキなどとともに石鹸やシャンプー代わりに使われた。石鹸としては良質であり、絹でできた柔らかな衣類を洗うのに適している。学名にあるSapindusは「インドの石鹸」という意味で、別名にも「セッケンノキ」がある。種子は泡立ちが良い上に不燃性であるため、消火剤としても使われた。
・名前の由来には、ムクロジが家にあると病を知らないとして「無患子(むくろし)」と呼ばれるようになったという説、果実のなる様子を「ツブナリ」と表現し、これが転訛したとする説、同科のモクゲンジを示す漢語「木樂子」が誤って使われたという説、種子が黒いため「実黒地(みくろじ)」が転訛したとする説がある。
・ムクロジの材は家具や器具に、黒くて硬い楕円形の種子は羽根突きの羽根や数珠に使われる。特に羽根突きでは、特有の乾いた音を出すため、本種の種子が欠かせないとされた。また、数珠の起源は「木槵子経(もくけんじきょう)」という経典にあるが、ここでも使うべき果実がムクロジなのかモクゲンジなのかはっきりしないという。
【ムクロジの育て方のポイント】
・やや耐寒性に乏しいため、植栽の適地は関東以南とされる。
・日向を好むが、土質は選ばない。葉を大きく広げるため、日向に植えれば日除けにできる。
・枝の出方が粗く、樹形が大振りであるため一般家庭の庭木として使われることは少ない。芽を出す力は強く、剪定に耐える。
・果実ができるのは、大木になってからであり、若い木には実がならない。
【ムクロジの品種】
・葉に模様が入る「斑入りムクロジ」という品種が知られる。
ムクロジの基本データ
【分類】ムクロジ科/ムクロジ属
落葉広葉/高木
【漢字】無患子(むくろじ)
【別名】セッケンノキ/モクレンジ
ツブノキ/モクレンジ
【学名】Sapindus mukorossi
【英名】Soapberry tree
【成長】やや早い
【移植】難しい
【高さ】15~20m
【用途】公園/寺社
【値段】1500円~