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ミツマタ/みつまた/三椏

Mitsumata/Oriental paper bush

みつまた,ミツマタ,開花時期
咲き始めの花の様子
ミツマタ,みつまた,庭木,特徴
枝が三つに分かれるためミツマタと命名された(冬芽と蕾の様子)
Oriental paper bush
開花直前にはヒマワリのように見える
三椏,木,画像,みつまた
花は外側から咲き始める
oriental paper bush,flower
小花が集まって大きな毬を作る(満開の様子)
みつまたの木,おしべ,めしべ
花の中央には雄しべが見え隠れする
みつまた,三又,樹木
開花期の様子(新宿御苑)
Oriental paper bush
花の終わりの様子
みつまたの木,特徴
花が終わると葉芽が動き出す
みつまた,樹木,ミツマタ
ミツマタの葉は中央よりもやや下の部分の幅が最も広い
三又,植木
裏面は白っぽい
みつまた,木,画像,ミツマタ
樹高は3m程度になる
三椏という木の実
ミツマタの実には毛がある
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実は7月頃に熟す
三椏の木,ツボミ
秋には翌年の蕾ができ・・・
ミツマタ,蕾,みつまた
来春の出番を待っている(年末ごろの様子)
みつまたのき,ミツマタ
樹皮には縦筋が入る

 

【ミツマタとは】

・中国の雲南地方やヒマラヤ地方を原産とするジンチョウゲの仲間。丈夫な樹皮の繊維を製紙に使うため古い時代に渡来し、畑で栽培されていたものが各地で野生化した。暖かい場所を好むため関東地方以西に分布し、特に中国地方や四国に多い。

 

 

・ミツマタが日本に渡来した時期は不明だが、慶長年間(1596~1615年)には既に製紙に使われていたという記録があり、室町時代あるいは江戸時代に栽培が始まったと考えられている。

 

 

・漢字表記は「三椏(あるいは三又)」で、「椏」は木の又を意味し、新しい枝が常に3本ずつ出ることに由来する。このため枝の分岐点を数えれば樹齢が分かるとされる。

 

 

・ミツマタの別名には「結木」「さきくさ」など様々あるが、「結木」は切れにくい樹皮を生かし、山の境界線の目印としたことによる。「さきくさ」は「幸草」が転じたもので、早春に咲くミツマタを吉兆の草としたもの。これは万葉集に依拠するが異説もある。 

 

 

・開花は葉が出る前の2~4月。前年の秋には葉の脇に蕾ができており、蕾から花が落ちるまでの期間が長いため、観賞目的に庭園に植栽されることも多い。花は筒状の小花30~50個からなり、外側の小花から順に咲く。咲き始めは蜂の巣のように下向きだが、咲き進むにつれて全体がボール状になる。

 

 

・小花に花弁はないが、10~15ミリある萼の先端が4つに裂けて花弁のようになる。萼の内側は鮮やかな黄色だが外側は銀毛に覆われるため、より鮮明に見える。内部には雌しべ1つと雄しべが8つあり、上部にある4つの雄しべは萼の縁に見え隠れする。

 

 

・ミツマタの漢名は「黄瑞香(おうずいこう)」で、ジンチョウゲに似た黄色い花が咲くことを意味する。ジンチョウゲ同様に優しい芳香を放つが、全草にクマリン配糖体という有毒成分を含み、誤食すると腹痛、下痢、胃炎、血便などの症状を引き起こす。

 

 

・花が終わると卵形の乾いた果実ができ、6~7月に熟す。果実は枯れた萼に包まれた緑色で、中には小さな種子を一粒を含む。暖地ではよく結実し、実生で増やすことができる。

 

 

・葉は長さ5~20センチ、幅2~4センチの長楕円形で両端が鋭く尖る。縁にギザギザはなく、若葉では両面に絹毛を生じる。葉の質は薄く、表面は鮮やかな緑色だが、裏面は白っぽい。短い柄があって枝から互い違いに生じる。かつては葉を煎じた液を水虫などの皮膚病に用いる民間療法があった。

 

 

・若い枝は緑色だが、樹齢を重ねると樹皮が発達して黄褐色となり、折っても切りにくくなる。ミツマタの花を生け花に使うことはあまりないが、樹皮を剥いで漂泊した枝は「晒しミツマタ」と呼び、花材に使う。

 

 

・平安時代以前は和紙の材料にガンピを使っていたが、より栽培が容姿であるためミツマタが使われるようになった。洋紙の普及と共に栽培規模は縮小したが、光沢のある紙質はミツマタならではのものがあり、卒業証書、地図、証券、ハガキの原料として使われる。

 

 

・ミツマタは紙幣(日本銀行券)の原料としても知られ、明治12年からキャッシュレス化の進む現在に至るまで、マニラ麻(アバカ)と共に高額紙幣にも使われ続けている。

 

 

・紙幣に使うミツマタの産地は高知、徳島、岡山などで、スギと共に山の斜面で育てられる。ただし、2006年以降は生産者の高齢化や後継者不足によって生産量が著しく減っているため、ほとんどの紙幣に、より安価なネパール産のミツマタが使われている。

 

 

【ミツマタの育て方のポイント】

・暖地性で排水の良い土壌を好む。東北南部までなら植栽可能。

 

 

・植え場所は日向から半日陰で、夏の西日や冬の寒風が当たらない場所がよい。特に苗木のうちは直射日光を嫌う。

 

 

・ジンチョウゲ同様に移植が難しいため、植え付けの際は考慮する必要がある。

 

 

・枝は規則的に伸びるので剪定の必要はあまりなく、手のかからない庭木といえる。剪定はあまり好まない。

 

 

・花芽は前年の秋にできる。冬季~早春に剪定すると花数は減る。

 

 

・病害虫の被害はほとんどないが、大株になるとテッポウムシの被害

に遭うことがある。

 

 

【ミツマタの品種、見分け方】

・アカバナミツマタ(ベニバナミツマタ)

 その名のとおり赤い花が咲く園芸品種。花の香りはやや強い。 

 

 

・タイリンミツマタ

 中国産の品種で、より芳香の強い花が咲く。花も大きいが枝も太い。 

 

 

・ヒマラヤミツマタ

 半常緑性で小ぶりな花を咲かせる品種。枝は細く葉質も薄い。

 

赤花ミツマタ 種類
アカバナミツマタはオレンジ色の花が咲く
オレンジの三椏
アカバナミツマタ
三椏,品種
タイリン(大輪)ミツマタ

 

【ミツマタに似ている草木】

コウゾ、ガンピ

 ミツマタ同様に和紙の原料として古くから用いられる。

 

 

ノリウツギトロロアオイ

 樹皮や根茎から採取される粘液を和紙の糊料(つなぎ)に使う。

 

 

オニシバリ(ナツボウス)

 同じくジンチョウゲの仲間だが、夏季に落葉するという特異な性質を持つ。

 

 

ミツバツツジ

 ミツマタやジンチョウゲ同様、枝が三股になる。

 

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ミツマタの基本データ

 

【分類】ジンチョウゲ科

    ミツマタ属

    落葉広葉/低木

【漢字】三椏/三又

    三叉(みつまた)

【別名】ミツマタノキ

    ミツマタコウゾ

    ミマタヤナギ/ムスビギ

    サキクサ/キキクサ

【学名】Edgeworthia chrysantha

【英名】Mitsumata

    Oriental paper bush

【成長】早い

【移植】難しい

【高さ】1~3m 

【用途】花木/公園/垣根/切花 

【値段】800円~

 

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