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ミズメ/みずめ/水芽
Japanese Cherry Birch
【ミズメとは】
・岩手県以南の本州、四国及び九州(高隅山まで)の山地に分布するカバノキ科の落葉高木。樹皮を傷付けると水のような樹液が出てくるためミズメと名付けられた。この樹液や枝葉にはサロンパス(湿布薬)のような匂いがあるが、かつては不快な匂いとされ「ヨグソミネバリ(夜糞峰榛)」という別名がある。
・ミズメの枝は弾力性が高く、古来より儀式で巫女が使う「梓弓」の材料となり、別名をアズサ、アズサノキという。かつてはキササゲやアカメガシワをアズサとする説もあったが、現在ではアズサ=ミズメであることが正倉院の宝物によって証明されている。弓に使ったのは、ミズメの材に含まれる独特の香りに魔除け効果も期待してとのこと。
・開花は4~5月頃。雌雄同株であり、葉の展開と共に雌雄それぞれの花を咲かせる。雄花は薄い黄色の穂状で前年度の枝先から垂れ下がる。長さは7~9センチほど。雌花は紅と黄緑色の円柱状で、上向きにできる。別名のアズサは、雄花が並んで垂れ下がる様を、馬具を装飾する「厚総(あつぶさ)」に見立てたことに由来するという。
・雌花の後には長さ2~3センチほどの楕円形をした果穂ができ、9~10月頃に熟す。果穂の中には広い翼を持った3ミリほどの種子があり、風によって拡散される。
・葉はやや薄く、長さ5~10センチ、幅3~6センチの卵形で先端が尖る。葉の縁には不規則なギザギザがあり、短い枝では対になって、長い枝では互い違いに枝から生じる。
・幹は最大で直径70センチほど。樹皮は灰色で横皴が入り、サクラ類に似る。材は良質で仕上がりがよく、フローリングや敷居などの建材、家具、器具、合板、漆器の木地、靴の木型に使われる。出版を意味する「上梓」は本種で製本用の版木を作ったことに由来する。木材業界では本種をミズメザクラと呼んでおり、サクラ材として数多く流通するがサクラの仲間ではない。
【ミズメの育て方のポイント】
・花や実が地味であり、造園用として使うことは稀だが、自生のものを生かしたり、背景にある天然の木を借景として使うことはある。カンバ類は冷涼な地を好むが本種は九州でも育てられる。
・日当たりと湿気を好むため、植え付ける際には植穴に腐葉土を混ぜるなどして保水性を確保したい。
・樹姿は整えにくく、剪定で管理するのは難しい。自然樹形を楽しみたい。ただし樹高はカバノキ類中、最も高くなる。
【ミズメに似ている木】
・シラカバ
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ミズメの基本データ
【分類】カバノキ科 カバノキ属
落葉広葉 高木
【漢字】水芽(みずめ)
【別名】ヨグソネバリ/ヨグソミネバリ
アズサ/アズサミネバリ
ミズメザクラ/アズサノキ
【学名】Betula grossa
【英名】Japanese Cherry Birch
【成長】早い
【移植】ふつう
【高さ】20m~25m
【用途】公園/雑木の庭
【値段】500円~