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ノリウツギ/のりうつぎ/糊空木
Panicled hydrangea
【ノリウツギとは】
・樺太や千島列島などを含む東アジアに広く分布するアジサイの仲間。日本では北海道から九州の高原や山地に見られるが、北海道や東北地方に特に多い。
・ウツギのように初夏に白い花を咲かせること、樹皮に含まれる粘液を利用して製紙用の糊を作ったことからノリウツギと命名され、ノリノキという別名もある。また、アイヌ語では「サビタ」といい、北海道では「サビタの花」と呼ばれる。
・ノリウツギの開花は6~9月で、枝先に伸びた花茎に、小さな花がまばらに集まってピラミッド状の円錐形を作る。遠目からはガクアジサイのように見えるが、花の様子はカシワバアジサイに近い。開花は一般的なアジサイに比べると遅い。
・花びらのように見える白いものは、萼が花びら状に変化した「装飾花」と呼ばれるもの。実際の花は画像のように小さいが、これには本当の花びらが5枚ある。装飾花の大きさは1~5センチで3~5枚単位で生じ、色は白が基本だが、ピンクを帯びるものもある。
・花の後には楕円形の果実ができ、10月ごろ褐色に熟すと中から尻尾のような翼を持つ種子が顔を出す。果実がなる頃、装飾花は淡いピンク色に変わることが多い。
・葉は長さ5~12センチの卵形に近い楕円形で、枝から対になって生じるのが基本だが、稀に3枚の葉が一緒に出る。葉の先端は鋭く尖り、縁には細かなギザギザがある。
・若い木の樹皮は赤みを帯びるが、樹齢を重ねると淡い灰色になり、薄く剥離する。樹皮は水に浸すと粘液が出る。和紙を作る際にはコウゾやミツマタの繊維を溶かした紙漉き水にノリウツギやハナオクラの粘液を加えることで、繊維を均等に分散させることができる。
・和紙の需要が減ったこと、シカによる食害が増えたことなどから、ノリウツギの商業的な栽培はほぼなくなったが、近年では掛け軸などの文化財修理に使う「宇陀紙(うだがみ)を作るため、自治体などが協力して栽培を復興する例もある。
・幹は直立するが根元から「ひこばえ」を多数生じ、株立ち状になることが多い。材は緻密で粘り強く、トネリコやヤチダモと同じような用途に使われるため、地方によっては本種をタモと呼ぶ。
・曲がりくねったノリウツギの根は、傘や杖の柄、パイプの材料として珍重され、北海道産の「サビタのパイプ」が特に知られる。
【ノリウツギの育て方のポイント】
・基本的には養分のある日向を好むが、伐採地に真っ先に生えるような木であり、適応力は高い。乾燥地であっても湿地であっても丈夫に育つ。
・アジサイとしては大きくなり過ぎるため、一般家庭の庭にはミナヅキのような園芸品種が向く。
・製紙に使う場合は、寒冷地で栽培したほうが、より質の良い糊になるとされる。
【ノリウツギの品種】
・斑入りノリウツギ
葉に白い模様が入る品種。模様の入り方によってさらに細かな品種名を当てる。
・ベニノリウツギ(ベニノリノキ)
紅花の品種で観賞用としてより人気がある。
・ビロウドノリウツギ
原種でも若葉の表面に毛があるが、これは軟毛が密生する。分布は愛知県。
・ヒダカノリウツギ
北海道の日高地方に見られる品種で、装飾花を持たないもの。
・ミナヅキ
アメリカで改良されたものが里帰りした園芸品種。長くて大きい花序を持ち、花の全てが装飾花となる。その他、ミナヅキ同様の園芸品種が以下のとおりある。
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ノリウツギの基本データ
【分類】アジサイ科/ノリウツギ属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】糊空木(のりうつぎ)
【別名】ノリノキ/サビタ
ニベ/ニベノキ/トロロウツギ
【学名】Heteromalla paniculata
【英名】Panicled hydrangea
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】2m~5m
【用途】花木/公園/鉢植え
【値段】500円~