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ニワトコ/にわとこ/庭常
Red berried Elder/Elder tree
【ニワトコとは】
・本州、四国及び九州に分布するレンプクソウ科ニワトコ属の落葉樹。山野の林内や日当たりのよい野原に自生する。食用あるいは薬用となるため、かつては好んで庭植えされ、その名残が住宅地近くの藪などに見られる。
・ニワトコという名の由来は不詳だが、古い和名のミヤツコギ(美夜都古木/宮子木/御奴木/造木)が転訛したとする説、京都の方言とする説などがある。ニワトコの仲間は中国や朝鮮半島にも自生し、中国では「接骨木」と表記するが、これは葉や根を骨折の治療に用いる薬としたことによる。
・西洋ではセイヨウニワトコを、精霊の住む神秘的な木、あるいはキリストの十字架の材となった木とする。ハリーポッターの主人公がニワトコの杖を使うのは、ニワトコが持つこうした神秘性によるもの。
・ニワトコの開花は3~5月。新枝の先に直径5ミリほどの小さな花が円錐状に集まって咲く。小花の花冠は深く五つに裂けて反り返り、萼も5つ。中央には雌しべと5本の雄しべがあり、雌しべの先端は暗い紫色で三つに裂ける。花序(花の集り)は直径5~10センチほどだが、泡立つように咲くため遠目からもよく目立つ。
・葉は長さ3~12センチ、幅3~6センチの小さな葉が3~7枚(先端に1枚と1~3対)集まって、長さ12~50センチの羽根状になる。小葉は長楕円形で先端が尖り、基部は丸く、縁には細かなギザギザがある。葉柄(葉の軸)は上面が溝になっており、断面は凹形になる。万葉集の時代、ニワトコは「やまたづ」と呼ばれ、葉が向き合う様から「迎え」の枕言葉に使われていた。
・ニワトコは個体による変異が多いとされ、葉の両面の脈上に毛があるもの、ないもの、葉の形が異なるもの等がある。食用になるのは早春にいち早く展開する新芽と若い蕾で、茹でて水に晒したものを和え物や御浸しにして食べる。ほうれん草や菜の花と大差ない味わいだが、青酸配糖体(サンブニグリン、コリン)を含んでおり、食べ過ぎると下痢になるため注意を要する。
・花の後には小さな球形~楕円球の果実が集まってブドウのような房になる。暗い紅色に熟すのは5~7月で、ムクドリやオオヨシキリはこれを採食する。果実の直径は3~5ミリ程度で、中には長楕円形の種子が3~5粒入る。ニワトコの実は有毒とされており人間の食用にはならないが、縄文時代の遺跡や土器からは種子がまとまって出土しており、果実酒などにして用いた可能性が検討されている。
・幹は灰白色あるいは黄色っぽい灰褐色で、樹齢を重ねるとコルク質が発達してゴツゴツした感じになり、縦に裂け目が入る。成長が極めて早いため材は柔らかく、材木には適さないが、稀に細工物に使われる。幹や枝の中心部を通る髄は灰色あるいは白色で太く、かつては植物実験のビスや顕微鏡用の切片に使われた。
・ニワトコは薬用木として知られ、開花直前の花を陰干したものは発汗、解熱、利尿に、煎じた枝葉はむくみや利尿に、そして枝葉を粉にしてキハダの内皮等と共に練ったものは、湿布として打ち身や骨折に使われる。
【ニワトコの育て方のポイント】
・暑さ寒さに強く、北海道から九州まで広い範囲に植栽できる。
・日陰にも十分に耐えが、日向に植えた方が花や実がなりやすい。
・細い幹が株元から乱立して株立ち状になるのが普通。太い枝が四方八方へ広がり、樹形はまとまりにくい。観賞用として狭い庭に植えるのは不適切だが、上記のとおり用途は多い。
・剪定にはかなり強く、自然樹形を無視して強く刈り込んで管理することはできる。
【ニワトコの品種】
・キミノニワトコ
稀に自生する果実が黄色い品種。
・ミヤマニワトコ
樹高が1m程度にしかならない品種。花や葉はニワトコよりも大きい。
・エゾニワトコ
北海道に見られる変種で、ニワトコよりも葉が大きく、葉裏に毛が密生する。果実は赤または黄色(キミノエゾニワトコ)で、色鮮やかに熟し、枝のコルク質が発達している。また、ニワトコの花序にはイボ状の突起があるが、エゾニワトコの花序には毛がある。
・セイヨウニワトコ
ヨーロッパ等を原産とする近縁種で黒紫色の実ができる。葉色にバリエーションがあり、「サンブカス」などの園芸商品名で流通。葉が黒い「ブラックレース」などが人気。
・アメリカニワトコ
北米(カナダ~テキサス州)を原産とする近縁種で、食用になるクリーム色の果実ができる。別名はカナダニワトコ。
【ニワトコに似た植物】
・ソクズ(クサニワトコ)
各地の山野に自生する大形の草。ニワトコによく似た葉を持ち、同じような花と果実ができる。
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ニワトコの基本データ
【分類】レンプクソウ科
ニワトコ属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】庭常(にわとこ)
【別名】接骨木(セッコツボク)
ミヤトコ/ヤマタヅ
タヅノキ/ハナノキ
ニワットコ
【学名】Sambucus racemosa
ssp. sieboldiana
【英名】Elder tree
【成長】かなり早い
【移植】普通
【高さ】3~10m
【用途】公園/実用
【値段】800円~