庭木図鑑 植木ペディア > ナンキンハゼ
ナンキンハゼ/なんきんはぜ/南京櫨
Chinese tallow tree
【ナンキンハゼとは】
・トウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木。名前は「南京」だが南京に限らず中国の中南部を原産地とし、江戸時代に種子から蝋を採る有用樹として長崎に渡来したものが、後に街路や公園に使われるようになった。「ハゼ」とはいうもののウルシ科のハゼノキとは別物であり、樹液に触れてもかぶれることはない。
・日本ではハゼノキから蝋を採取していたが、中国では気候の関係から生育できず、本種を利用していた。「ハゼと同じように蝋が採取できる中国の木」という意味合いでナンキンハゼと命名されたという説が有力だが、紅葉が埴輪の色に似ているため、埴輪を作る埴師(はにし)にちなんで命名されたという説もある。
・新緑、紅葉、そして寂しい冬の街路を彩る風変わりな果実など、年間を通じて観賞価値が高い。また、どんな土壌でも育ち、剪定や移植に強いという使い勝手の良さもあり、関東以西ではさかんに植栽されたが、種子から容易に発芽する繁殖力の強さから、近年では迷惑視されつつある。
・葉は枝から互い違いに生じ、菱形に近い卵形となりポプラに似る。たいていの樹木は美しく紅葉するために寒さが必要だが、ナンキンハゼは暖地でもカラフルに紅葉するため、特に関西以西では珍重される。
・ナンキンハゼの開花は5~7月。枝先に黄緑色をした小花が、長さ5~15センチの穂状に連なって咲く。雌雄異花。花木として注目されることはほとんどないが花には微香があって昆虫がよく集まり、蜂蜜を作る蜜源となる。
・秋(10~11月)に熟す果実は黒褐色の殻(種皮)に覆われているが、寒くなるにつれて殻が割れ、中からポップコーンのような三つの種子が飛び出す。表面を覆う白いものは仮種皮でこれが蝋質。果実は落葉後もしばらく木の上に残る。
・思わず触れたくなるようなナンキンハゼの種子だが、この汁液にはジテルペン酸エステルなどの有毒成分が含まれる。触れれば皮膚がかぶれ、誤飲すれば嘔吐、下痢、腹痛を引き起こすが、カラス、スズメ、キジバト、シジュウカラ、メジロ、ショウビタキ。エナガなど多くの鳥がこれを採食する。
【ナンキンハゼの育て方のポイント】
・とにかく成長が早く、横へ広がりやすい。また、枝葉が垂れやすく往来の妨げになることも多いため、スペースに余裕を持って植える必要がある。一般家庭での地植えには無理があり、どうしても欲しければ鉢で管理するのが無難。
・暖地性であり、関東以西の温暖地が植栽の適地とされる。日向であれば痩せ地でも育てられるが、美しい新芽を見るためには、有機肥料(油かす、鶏糞、骨粉など)を冬季に施す。
・日当たりと風通しの良い場所で管理すれば、病害虫はほとんど見られない。
・剪定に強いが、一律に刈り込むと季節に応じた観賞価値がなくなる。成長の早さとの戦いになるが、不要な枝を適宜元から抜くような剪定が本来は望ましい。
【ナンキンハゼの品種】
【ナンキンハゼに似ている木】
・シラキ
ナンキンハゼと同じトウダイグサ科の樹木で、似たような時季に似たような紅葉のグラデーションを作るが、葉の形は明確に異なる。ナンキンハゼは先端が尖ったハート型に近く、シラキは御覧のとおり楕円形に近い。
ナンキンハゼの基本データ
【分類】トウダイグサ科/ナンキンハゼ属
落葉広葉/高木
【漢字】南京櫨/南京黄櫨(なんきんはぜ)
【別名】トウハゼ(唐櫨)
ウキュウ(烏臼木)
【学名】Triadica sebifera
【英名】Chinese tallow tree
【成長】早い
【移植】やや難しい
【高さ】7~15m
【用途】街路樹/公園
【値段】800円~