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ナツグミ/なつぐみ/夏茱萸
Cherry silverberry
【ナツグミとは】
・北海道南部から九州までの広い範囲に分布するグミ科の落葉低木。沿海地や丘陵に自生するが、果実を観賞あるいは食用するため、公園や庭園に植栽されることもある。日本に約13種類あるグミの一つで、漢名は「木半夏」という。
・春に熟すナワシログミに対し、夏に果実が熟すためナツグミと呼ばれるが、ここでいう夏は5~7月の初夏。「グミ」はトゲのある実を表す「グイミ」が転訛したものとする説が有名だが、諸説あってはっきりしない。単にグミという場合はアキグミを意味することが多い。
・開花はアキグミと同じ4~5月で、葉の付け根から伸びた1~3センチの柄に淡いクリーム色の花が1~3輪ずつ咲く。花には花弁がなく、花弁に見えるのは萼(がく)が変形して先端が四つに裂けたもの。萼筒は長さ8ミリほどで、毛が密生した長さ10ミリほどの花柄に続く。
・葉は長さ3~10センチ、幅2~5センチの楕円形あるいは卵形で先端が尖り、枝から互い違いに生じる。裏面は銀白色の細かな毛が密生して白っぽく見えるが、淡い褐色の斑点を生じる。枝は赤褐色で若い枝には細かな毛があり、細い棘のあることも。
・果実は直径15ミリほどでアキグミよりも大きな楕円形。開花翌年に赤く熟す。完熟すれば甘味があって生で食べることもできるが、未熟なものは渋味があって食べづらい。中には種子が1粒入っているが、本当の果実はこの種子の堅い核にあり、プニプニした果肉のような部分は「花托」が変化した「偽果」。ムクドリ、オナガ、ヒヨドリなどの野鳥はこれを採食する。
・若い木の樹皮は白っぽい灰色だが、樹齢を重ねると褐色かつシワシワになる。幹の直径は最大で60~70センチほどであり、大きな材木にはならないが、緻密で丈夫なため大工道具の柄や囲炉裏の自在カギに使われる。
【ナツグミの育て方のポイント】
・土質を選ばず、日当たりが良ければ痩せ地でも育てることができる。
・乾燥に強い。逆に水はけの悪い場所では育ちが悪い。
・丈夫であまり手がかからないが、枝分かれが多く繁茂しやすい。芽を出す力が強く、剪定にも耐えるが、形は整いにくい。
【ナツグミの品種・変種】
箱根などに生え、葉の幅が細いホソバナツグミ、葉が丸みを帯びるマルバナツグミ、白や黄色の模様が入るフイリナツグミがある。また変種のトウグミは渋味が少なくて食べやすい。
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ナツグミの基本データ
【分類】グミ科/グミ属
落葉広葉/低木~小高木
【漢字】夏茱萸(なつぐみ)
【別名】ヤマグミ/サツキグミ
【学名】Elaeagnus multiflora
【英名】Cherry silverberry
【成長】早い
【移植】ふつう
【高さ】2~4m
【用途】庭園/公園/果樹
【値段】600円~