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ウワミズザクラ/うわみずざくら/上溝桜
Japanese bird cherry
【ウワミズザクラとは】
・北海道南西部~九州に分布するサクラの仲間。湿気のある低地の藪や沢沿いの斜面などに多数見られるが、自生をいかした庭木として公園や緑地にも使われる。
・ウワミズザクラの開花は新葉が展開した後の4月から5月。直径6~8ミリほどの小さな白い花が、長さ10センチ前後の穂状に集まって咲く。多数の雄しべがブラシのように並び、5枚ある花弁は雄しべよりも短い。一つ一つの花を見ればサクラの仲間だと納得しやすいが、ソメイヨシノのようなサクラの花のイメージとは程遠く、鑑賞のために人が集まることはほぼない。
・葉は卵形で先端は尾状に長く尖り、枝から互い違いに生じる。日向であれば秋には紅、ピンク、黄色と様々に紅葉し、花の時季よりも人目を惹く。落葉と同時に花や実が付いていた小枝は落下するため、冬季の枝ぶりは独特のものとなる。
・8月ごろから出来始める果実は直径8ミリほど。緑、黄色、赤、黒紫と移り変わる。十分に熟したウワミズザクラの果実は甘くて美味しく、ツキノワグマなどの野性動物はこれを食餌とし、ヒヨドリ、ムクドリ、オナガ、キジバト、メジロ、アオゲラ、ハシブトガラスなど多くの野鳥もこれに集まる。
・若い蕾を塩漬けにしたものは「杏仁香(アンニンゴ)」と呼ばれ、焼き物の前付けや酒の肴にされる。杏仁香(杏仁子)は不老不死の妙薬とされ、三蔵法師は仏教の経典と共にこれを求めて旅に出たという説もある。杏仁香を漬けた果実酒は杏仁香酒と呼ばれる。
・かつてこの木の枝で亀の甲羅や鹿の角を焼き、それらにできた溝の位置で吉凶を占ったことから、上溝桜の名が付けられた。天皇が即位して最初に行う新嘗祭(大嘗祭)の儀式に使う「ハハカ(波波迦)」とはウワミズザクラのことで、古事記に由来する神秘的な行事だが、今上天皇が即位した際にもこれに倣ってコメの品種を決めた。
・材は堅く、断面は臭気がきつい。若い枝を折っても同様の臭いがする。樹皮はいかにもサクラだが、材としては他のサクラよりも劣るため材木に使用されることはほぼないが、火力が強いため薪には適する。
【ウワミズザクラの育て方のポイント】
・通好みの地味な花であり、花を目的に植栽されるケースは少ない。雄大な樹形を鑑賞するものであり、公共のスペース以外では管理が難しい。
・丈夫な性質を持つが、自生地は山間の沢沿いであり、湿気と栄養分のある土地を好む。また、きれいな紅葉を見るには日当たりが重要。
・花が咲くのはその年に伸びた枝先であり、3~4月に剪定すると花数は少なくなる。
【ウワミズザクラに似た花木】
・エゾノウワミズザクラ
北海道に見られる近縁種。雄しべが花弁より短いのがウワミズザクラとの違い。
・シウリザクラ(ミヤマイヌザクラ/シオリザクラ)
北海道や中部地方の山間など寒冷地に見られる近縁種。花弁と雄しべが同じくらいの長さで、葉の基部がハート型になる。「シウリ」はアイヌ語で「苦い」を意味する「シウニ」に由来し、果実や樹皮に苦味がある。
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ウワミズザクラの基本データ
【分類】バラ科/ウワミズザクラ属
落葉広葉/高木
【漢字】上溝桜(うわみずざくら)
【別名】ハハカ/ホエビソ
コンゴウザクラ(金剛桜)
【学名】Padus grayana
【英名】Japanese bird cherry
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】10m~20m
【用途】公園/食用
【値段】2000円~