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ウツギ/うつぎ/空木
Japanese Snow Flower
【ウツギとは】
・北海道南部から九州まで日本各地に見られるアジサイ科の落葉低木。日当たりのよい野原や山林の縁、土手などで普通に見られ、初夏を代表する花として万葉の古くから親しまれる。花に着目し「ウノハナ(ウツギの花の略)」と呼ばれることも多い。
・ウツギの開花は4~6月で、小さな白い花が円錐状になって枝先に咲く。それぞれの小花は釣鐘型で、長さ1~2センチの花弁が5枚と3~4本の雌しべ、そして10本の雄しべがある。花弁は満開でも開ききらない。
・唱歌「夏は来ぬ」では「卯の花の匂う垣根にホトトギス~」と歌われるがウツギの花には香りがなく、純白の花の美しさを詠んだものと解釈されている。大阪府高槻市にある「玉川の里」は古くからウツギの花の名所とされる。
・花の後にできる果実は直径5ミリほどの椀型。木質で硬く、先端が少し凹む。できはじめは緑色だが、10~11月になると黄褐色に熟して種子を蒔き散らす。野鳥に人気とはいえず、シジュウカラやウソが稀にこれを啄む。
・葉は卵形あるいは楕円形で先端が尖り、付け根側の方が幅広い。長い枝から対になって生じるため、羽根状に見える。若葉の表面には細かな毛が星形に集まって生えており、手で触れるとザラザラする。
・幹や枝の中心に「髄」がなく、空洞になっていることから「空木(うつろぎ)」が転じてウツギと呼ばれるようになった。別名ウノハナは、卯月(旧暦の4月)に開花する「ウヅキノハナ」から転訛したもので、料理の名前にも使われる。
・丈夫で育てやすいことから、かつては畑や敷地の境界線に植える「境木」として使われることが多かった。身近な木であり、カキミグサ(垣見草)、シオミグサ(潮見草)、ナツユキソウ(夏雪草)、ユキミグサ(雪見草)、ハツミソウ(初見草)、水晶花、ウツケ、アサッボなど別名や地方名が多い。万葉集にはウツギの垣根が詠まれており、これが日本最古の生垣の記録とされる。
・樹皮は褐色で若木のうちは細かな毛を密生させるが、成長すると縦に剥離する。乾燥したウツギの枝や幹は硬くて腐りにくく、木槌や木釘、酒樽の木栓に使われた。このため「ウツギ」は「打つ木」が転じたものとする説もある。古代の火起こしにもウツギで作った錐が使われ、出雲大社や諏訪大社の神事にその名残が見られる。
【ウツギの育て方のポイント】
・耐寒性、耐暑性があり、北海道から九州までの広い範囲に植栽できる。
・湿気のある日向を好む。土質は選ばず、病害虫にも強い。ただし、栄養の乏しい場所では花つきが悪い。
・植栽後4~5年もすればかなり大きな株になり、不要な枝も増える。4年に一度程度、株元ですべての枝を切り除いて更新するのがよい。芽を出す力は強く、強い剪定にも耐える。
・幹や枝にはトゲのような「稜(りょう)」があるため素手では扱いにくい。
【ウツギの品種】
日本には以下のものを含めて十種以上のウツギがある。いずれも枝葉に「星状毛」と呼ばれる、枝分かれした細毛が見られるのが特徴。
・サラサウツギ
八重咲きで花弁の縁がピンク色を帯びている。
・サクラウツギ
ウツギの交配種で、白い花弁の縁に淡いピンク色の模様が入る。
・シロバナヤエウツギ
八重咲きの品種でゴージャスな花を咲かせる。花は重みで垂れ下がるように咲く。
・斑入りウツギ
葉に白や黄色の縁取りや斑模様が入る園芸品種。
【ウツギとの名が付く木】
ウツギと名乗る樹木はたくさんあるが、中には花がウツギっぽい、あるいは幹が中空なだけで分類上はあまり関係のないものが多い。
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ウツギの基本データ
【分類】アジサイ科/ウツギ属
落葉広葉/低木
【漢字】空木/卯木(うつぎ)
【別名】ウノハナ(卯の花)
ウツロギ/雪見草
サカイウツギ/水晶花
【学名】Deutzia crenata
【英名】Japanese Snow Flower
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】1~3m
【用途】公園/垣根/花木
【値段】500円~