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フサザクラ/ふさざくら/房桜
Japanese euptelea
【フサザクラとは】
・本州、四国及び九州に分布する落葉樹で、西日本の谷筋や山間の路傍、崩落地などに多い。サクラとはいうもののソメイヨシノなどのサクラ(バラ科)の仲間ではなくフサザクラ科に属する。
・日本以外ではヒマラヤや中国に自生。中国の南部やインドのアッサムにはフサザクラの仲間が分布するが、日本において同科に属するのは本種のみであり、コウヤマキやヤマグルマなどと同様に「一属一種」の木とされる。
・フサザクラの開花は3月下旬~4月。葉に先立って咲く花は画像のとおりで花弁がなく、いわゆる花らしい花にはならないが、房状に垂れ下がる様を遠くから見るとサクラに似た雰囲気があり、フサザクラと名付けられた。
・房状に垂れ下がるのは雄しべで紅色の部分は葯。控えめな花の様子が好まれ、古い時代には茶花として露地などに植えられた。葉が開く頃に雄しべは抜け落ち、隠れていた黄色い雌しべが顔を出す。
・「フサ」は「房」あるいは「総」と表記される。10月頃に熟す果実も花同様の房状になり、サクランボとは異なる。フサザクラの学名は、「ニレより美しい実がなる」といった意味合いを持ち、一つ一つの形はニレの実に似て翼がある。
・自生地は水分の多い谷筋や崖地など不安定な場所であり、崩落に備えて根元から多くの「ひこばえ」を出すため、群生するかのように見える。また、画像のように、幹が横に倒れ、枝が垂直に伸びていることが多い。
・葉がクワの葉に似ていることから「タニグワ」「クワモドキ」との別名がある。葉は円形あるいは楕円形で先端が極端に突出すること、縁のギザギザが不規則であることが特徴で、ニレ科のオヒョウに似た葉になることも。枝から互い違いに生じるが、短い枝では束になって出ることもある。
・ヤマグルマやカツラと同様、幹に道管ががなく、材は仮導管からなる。水に強いことから船のオール(櫂)などに使われ、皮目の多い樹皮はモチノキやヤマグルマなどと同様に鳥もちを作るのに使われた。
【フサザクラの育て方のポイント】
・上述のとおり湿気を好み、大雨で水に浸かるような場所でも育てられる。日照は欠かせないが、土質は選ばない。
・目立った病害虫は見られず丈夫に育つが、成長が早い反面、剪定を好まない(樹形が乱れる)ことから、狭い場所では管理が難しい。樹高は5m程度になるものが多いが、条件が良ければ20m近くに達する。
【フサザクラに似ている木】
・カツラ~同じように原始的な花が咲き、実ができる。葉も似ており系統的に近縁とされる。
フサザクラの基本データ
【分類】フサザクラ科
フサザクラ属
落葉広葉/高木
【漢字】房桜/総桜(ふさざくら)
【別名】タニグワ/ワサクワ
クワモドキ/タニハリ
【学名】Euptelea polyandra
【英名】Japanese euptelea
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】7~10m
【用途】公園/茶花
【値段】2000円~