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ヒメシャラ/ひめしゃら/姫沙羅
Japanese stuartia
【ヒメシャラとは】
・箱根以西の本州(中国地方を除く)、四国及び九州の山地に分布するツバキ科の落葉高木。樹皮や初夏に咲く控えめな花の雰囲気が好まれ、古くから庭木として寺院や茶庭に使われる。新緑や紅葉も美しく、全般に明るい雰囲気を持つことからシンボルツリーとして一般家庭の玄関付近に植栽される例も多い。
・ヒメシャラという名前は、シャラノキ(ナツツバキ)よりも花や葉が小さいことによる。シャラノキは本来、インド原産の沙羅双樹のことであるが、仏教が日本へ伝播した際に沙羅双樹がなかったため、日本に自生するナツツバキを沙羅双樹ということにしたもの。
・開花は5~7月で、葉の付け根から生じた花茎に直径1.5~2センチの白あるいは薄ピンク色の小花が下向きに咲く。花は形こそツバキに似るが、花弁はより薄くて小さく、雰囲気は異なる。5枚ある花弁は基部でわずかに密着し、花の中央には多数の雄しべと、先端が五つに裂ける花柱(雌しべ)がある。
・花の後にできる果実は直径1センチほどの卵形で、先端が尖る。ツバキとはだいぶ異なった木質で、9~10月頃に熟すと自然に五つに裂け、中からレンズ型の種子が飛び出す。種子は周囲に翼があり、母樹から多少離れて実生となる。
・葉は長さ3~8センチ、幅1~2センチで縁には浅いギザギザがあり、先端は尖る。裏面の葉脈上には軟毛があり、白っぽく見える。秋になると紅葉するが、乾燥地では葉がチリチリになって観賞価値が下がる。なお、ピンク色の花が咲くヒメシャラの葉は赤みがかった色合いになる。
・若い木の枝はジグザグ状に伸びるが、樹齢を重ねると枝は上へ伸び、樹形全体としては箒を逆さにしたようになる。幹は直立し、若木の樹皮は赤褐色でツルツルしているが、次第に灰色っぽい模様が出て樹皮がまだらに剥離し、最終的には、再度、赤褐色になる。別名のアカラギはこの色による。
・成木の樹皮はサルスベリに似た触感があり、地方によっては本種をサルスベリと呼ぶ。幹の美しさからヒメシャラはアオギリ、シラカバと並ぶ、「日本三大美幹」と称され、冬の林間では特に目立つ。材も赤褐色で硬く、彫刻、器具、床柱に使われる。
【ヒメシャラの育て方のポイント】
・性質はナツツバキとほぼ同じだが、より温暖な地を好み、天然分布の北限は箱根。本来は栄養豊富で湿気のある山地に自生するため、土が合わないとうまく育たない。ナツツバキに比べると適応力は低めであり、移植後に枝先から少しずつ枯れていくことも多いため。植える場所には腐葉土を漉き込むなどして土壌を整えた方がよい。
・幹は直立し、放任しても整った樹形になる。自然樹形を楽しむ木であり、剪定は最低限ですむ。ノコギリ等で剪定すると、格段に樹形が乱れる。また、花はその年に伸び枝に咲くため、春から初夏にかけての剪定は避けたい。
・日なたを好むが、根が浅く乾燥しやすい。夏の強い日差しや西日は苦手とし、乾燥すると葉焼けを起こすため、根元に下草を植えるなどの対策が必要になる。花木としては日陰に強い。
・ツバキやサザンカ同様に、チャドクガの被害に遭うこともある。ゴールデンウイーク前は特に葉の裏を観察し、卵の段階で早めに除去するのが望ましい。
・幹はナツツバキよりも美しいとされる。広い庭があれば複数本を植えて幹の美しさを強調するのもおもしろい。
【ヒメシャラの種類】
・トウヒメシャラ
花や実がより大きい。幹には画像のような黒い線が入る。
・トウゴクヒメシャラ
トウヒメシャラの変種で葉の裏面に毛がある。
・ヒコサンヒメシャラ
福岡県の英彦山で発見された品種。花弁の一部がピンク色になり、幹に黒い縞模様が入る。
【ヒメシャラに似ている木、見分け方】
・ヒメシャラとナツツバキの違い
花~ナツツバキの花は直径5~6センチのツバキ大になるが、ヒメシャラの花は直径1.5~2センチであまり目立たない。
幹~ヒメシャラはサルスベリという別名があるように幹が滑らかになるが、ナツツバキは樹皮が半端に剥がれ落ちて模様ができる。
紅葉~ヒメシャラは赤く紅葉する。
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ヒメシャラの基本データ
【分類】ツバキ科/ナツツバキ属
落葉広葉/小高木~高木
【漢字】姫沙羅(ひめしゃら)
【別名】ヤマチシャ/アカギ
アカラギ
サルスベリ/サルナメリ
サルタノキ
【学名】Stewartia monadelpha
【英名】Japanese stuartia
【成長】やや早い
【移植】やや難しい
【高さ】7~15m
【用途】花木/公園/茶庭/切花
【値段】1,500円~