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ハルニレ/はるにれ/春楡
Japanese Elm
【ハルニレとは】
・北海道~九州の各地に分布するニレ科の落葉高木。北日本を中心とした寒冷地の沢沿いなどの湿地に自生し、公園や街路にも植栽される。生育に適した北海道では特に大木が多く、北海道大学のハルニレが特に知られる。日本以外では朝鮮半島やアジア大陸の東北部に分布。
・春に花が咲いて実がなるため、秋に開花、結実するアキニレに対してハルニレというが、単にニレという場合は本種を示すことが多く、ニレ材(アカダモ)として流通するのも本種が中心。ニレの仲間にはほかにオヒョウがある。
・ハルニレの開花は3~5月。若葉が展開する前に咲くものの、高い場所に咲くため目立たない。花は雄しべと雌しべを持つ黄緑色の両性花で、前年に伸びた葉の脇で10個前後が束になって咲く。花は小さいが花言葉は「威厳」で、雄大な樹形にちなむ。
・花の後にはたくさんの果実がなり、5~6月頃に熟す。果実は1.5センチほどでの扁平した団扇形で先端の中央がへこむ。小さな種子の周りに翼を持ち、これを蒔けば増やすことができる。実るのが早いため野鳥が集まるのは稀。
・葉はサクラに似るがやや分厚く、縁のギザギザが目立つ。先端は尖り、葉の下半分が左右非対称であるのが特徴。長さ3~12センチ、幅は3~5センチでアキニレよりも断然大きい。表面には細かな毛が多く、手で触れるとザラつく。寒冷地では秋の紅葉が美しい。
・樹皮は画像のように灰褐色で、樹齢を重ねると縦縞やささくれができやすい。樹皮を剥ぐとヌルヌルした液が生じることからニレと呼ばれる(滑れ=ぬれが転訛した)。この樹液は紙漉のツナギに使われる。
・樹高は最大で30m以上に達し雄大な樹形となる。幹は最大で直径1mを超える。材は硬くて木目が美しく、ケヤキの代用としてテーブル、建材、器具材、楽器材として使われることもあるが、乾燥によって寸法が狂いやすく扱いにくい上、耐久性も低い。材はくすんだ褐色で、別名を「アカダモ」と呼んでヤチダモの代用とするが、タモ材の代表であるヤチダモと分類上の関連はない。
・ハルニレはアイヌ語で「チキサニ」というが、その意味は「我らこする木」であり、火おこしに本種を用いたことに由来する。また、アイヌの伝説では、雷神が容姿端麗なハルニレ姫の上に落ちて、人間の先祖であるアイヌラックルが生まれ、ハルニレ姫はアイヌラックルのために自分の樹皮で衣を作ったという。
・欧米でニレ(英名エルム)という場合は、ヨーロッパニレとアメリカニレを示し、これらはプラタナス、マロニエ、リンデン(セイヨウボダイジュ)と並んで世界四大並木樹に数えられる。ヨーロッパニレの葉はアメリカニレよりも緑が濃い。
【ハルニレの育て方のポイント】
・日陰でも日向でも育つが、湿気と栄養分のある土地を好む。
・丈夫で成長が早いものの剪定は好まない。広いスペースが必要であるため、一般家庭の庭木としてはあまり使われない。
・アキニレに比べて大気汚染に強いため街路樹にも使われるが、暖地ではアブラムシの被害が多く、まともな葉っぱにならないことがある(オカボノクロアブラムシによるハルニレハフクロフシという状態)
【ハルニレの品種】
・コブニレ
幹や枝のコルク質が発達してコブ状に隆起した個体。正式な品種ではない。
【ハルニレとアキニレ】
写真のとおり葉の形、大きさがまったく異なる(左がハルニレ、右がアキニレ。ただし大きさについては時季や個体によって異なる。)
ハルニレの基本データ
【分類】ニレ科/ニレ属
落葉広葉/高木
【漢字】春楡(はるにれ)
【別名】ニレ/アカダモ
エルム/ヤニレ
【学名】Ulmus davidiana
var.japonica
【英名】Japanese Elm
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】15m~35m
【用途】街路樹/公園/盆栽
【値段】1000円~