庭木図鑑 植木ペディア > ヤマグワ
ヤマグワ/やまぐわ/山桑
Chinese mulberry
【ヤマグワとは】
・北海道から九州まで日本全国の丘陵や山地に広く自生するクワ科の落葉樹。かつては中国産のマグワと共に養蚕のための重要な飼料として栽培され、「蚕が食う葉」から「クワ」と呼ばれる。最も普通に見られるクワの一種で、単にクワという場合は本種を示すことが多い。日本以外でも中国や朝鮮半島に分布。
・クワには北陸から東北で多く栽培されたヤマグワ、南西諸島、九州南部及び中国地方に分布する暖地性のシマグワ、中国中南部原産で九州、四国及び中国地方で栽培されたロソウ、日本全国で栽培された中国産のマグワ(=トウグワ)、伊豆諸島のハイチジョウクワ、小笠原諸島のオガサワラグワなどがある。
・狭義ではヤマグワのみがヤマグワだが、広義では暖地性のシマグワ(島桑)に対して耐寒性のあるクワをヤマグワとし、ヤマグワ、トウグワ、ロソウを総称する。
・ヤマグワの葉は長さ7~20センチ、幅5~12センチほどで、枝から互い違いに生じる。形は画像のとおり多様だが、いづれも付け根付近から3本に分かれる葉脈が目立つ。
・若い木の葉は裂け目が多く、成木になると楕円や卵形になりやすい。ヤマグワの葉はマグワと異なって先端が細く尖り、縁にはギザギザがある。クワの葉には特殊なアルカロイドが含まれており、蚕の仲間以外はこれを食べない。蚕はクワ以外にもコウゾ、タンポポ、チシャ、アキノノゲシなども食べるが、クワの葉を最も好む。
・ヤマグワの開花は4~5月頃。その年に伸びた枝葉の脇に花が咲く。雌雄異株(稀に同株)で、花弁はなく、雄花には4本の雄しべ、雌花には長さ2~3センチの雌しべが1本あり、その先端(柱頭)は二つに裂ける。
・雌の木に咲く雌花の後には長さ5~14ミリほどの果実ができる。でき始めの実は白っぽく、次第に赤、紫、黒へと変化しながら5~8月頃に熟していく。
・未熟なヤマグワの果実は硬くて酸っぱいが、熟した実は柔らかくて甘みがあり、昔は子供のオヤツになった。生食のほか、ジャムやアイスクリーム等に加工して利用できる。ヒヨドリ、ツグミ、オナガ、ムクドリ、シロガシラ、アカゲラなどの野鳥はこれを採食する。
・地方によってはクワの実を「ドドメ」と呼び、ここから「ドドメ色」という表現が生まれたとする説がある。
・直径は最大で60センチほど。樹皮は灰色っぽい褐色で、樹齢を重ねると縦に剥離するが、丈夫な繊維質で和紙の原料に使われる。材は硬質で耐久性が高いことに加え、色味が良く、「杢(もく)」と呼ばれる美しい模様が入りやすいことから、床柱、框(かまち)、茶道具、針箱、鏡台、家具、仏壇など見た目を重視する造作の化粧に使われた。材としてはシマグワが勝るが入手は難しい。
【ヤマグワの育て方のポイント】
・日本のほか東南アジアやヒマラヤにも分布する。暑さ寒さに強く、丈夫で育てやすい。
・果実目的に植栽するのであれば雌株を植える必要がある。雄株には実がならない。
・成長が早く、枝葉が間延びすることや、葉が大きいことから、観賞用として扱うことは少ないが、例えば昭和時代の農村をテーマにした
庭園を造るような場合にあえて使用することがある。また、葉を採取してカイコ等に利用する場合は樹高を低く抑えて、低木状に管理する。
・クワカミキリやキボシカミキリなどカミキリムシ類の食餌であり、食害によって枯れることがある。枝に産み付けられた卵からかえった幼虫は材を食べながら幹の方へ降り、樹皮に穴を空けてオガ屑のような糞と木屑を出すため、早期に捕殺した方がよい。
・根に病菌がつきやすい。
・実生、挿し木で増やす。
【園芸用のクワの品種】
・フイリヤマグワ
・シダレヤマグワ
・コウテングワ(ウンリュウグワ)
曲がりくねる枝が独特であり、生け花に使われる。大正時代に実生から作出された。
ヤマグワの基本データ
【分類】クワ科/クワ属
落葉広葉/低木~高木
【漢字】山桑/柘
(やまぐわ)
【別名】クワ
【学名】Morus austrails
【英名】Chinese mulberry
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】3~12m
【用途】養蚕/鉢植え/公園
【値段】1、000円~