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ソメイヨシノ/そめいよしの/染井吉野
Somei yosino cherry
【ソメイヨシノとは】
・バラ科サクラ属の落葉高木で、300種類以上ある日本のサクラを代表する園芸品種。葉に先立って咲く花は煌びやかであり、春の訪れを誰もに実感させる。
・北海道から九州の各地に植栽されるが、都市部に植栽されるサクラのほとんどはソメイヨシノであり、特に関東地方ではその傾向が高い。
・江戸時代の終わり~明治初期に染井村(現在のJR駒込駅から染井墓地の周辺)の植木職人が「吉野桜」として売り出したのが本種の起源とされるが、ヤマザクラの名所として名高い吉野山のサクラも吉野桜と呼ばれていた。明治18年に上野公園でサクラの調査を行った博物学者の藤野寄命氏が、混同を避けるためソメイヨシノに改め、明治33年に発表した。
・開花は3~4月。日本全国のソメイヨシノはすべて同一のソメイヨシノから接木して作られたもので、同じ遺伝子を持つ。一日の平均気温が5℃を下回る日が一定期間続いた後、同10℃以上の日が続くと一斉に開花するなど、気温に対して同じ反応を示すため、サクラ前線を形成することができている。今現在目にする多くのソメイヨシノは戦後の復興期に大量に生産されたもの。
・ソメイヨシノの起源については、大正初期に日本を訪れたイギリスのプラントハンター、ウィルソン氏が最初にオオシマザクラとエドヒガンの交雑種だとした。これらを掛け合わせて再現する試みは未だに成功しておらず発生の経緯は判っていないが、両者の雑種であることは遺伝子情報からも支持されている。
・花の色は薄いピンクのイメージだが、実際にピンク色を帯びるのは咲き始めだけであり、時間の経過と共に白くなっていく。乾燥や潮風に弱く、暖地では花の形がきれいにならないため、ソメイヨシノは東日本に多い。
・花の直径は4センチ前後で5枚ある花弁の先端には切れ込みが入る。花の中央には30~35本の雄しべとほぼ同じ長さの雌しべがある。花柄は長さ2~3センチで、裏側にある萼の縁に小さなギザギザがあり、花柄、萼、雌しべの付け根に毛があるのが特徴。
・ソメイヨシノの果実(サクランボ)は球形で、5~6月になると赤から黒紫色に熟す。サクラ類の結実は稀とされ、多数の雄しべによって花粉を飛ばすことで自身の遺伝子を残すことを優先しているとされるが、個体数が多いためサクランボを見ることは珍しくはない。種子を播けば芽が出るものの、ソメイヨシノにはならず、食用にも適さない。
・葉は長さ8~12センチの楕円形で先端が尖り、縁にはギザギザがある。枝から互い違いに生じ、葉柄や裏面の脈の上に毛があるのがヤマザクラとの違い。葉柄の上部あるいは葉の基部にはサクラ類に共通する一対の蜜腺(イボ状のもの)がある。
・環境が良ければ紅葉も美しいが、都市部の環境では鑑賞に堪えるような紅葉にはならず、早ければ9~10月頃に落葉する年もあり、鑑賞期間は短い。基本的には葉が黄色くなる「黄葉」であり、赤く見えるのは病気の葉であることが多い。
【ソメイヨシノの育て方のポイント】
・日当たりが良く、肥沃な土地を好む。
・寒さには耐えるが札幌周辺が生育の北限になる。
・病気(テングス病)や害虫(モンクロシャチホコ、オオミズアオ、イラガ、ヒロヘリアオイラガなど)が多く、個人の庭では敬遠されやすい。また、寿命は50~60年(長くても100年程度)で一般的な樹木に比べれば短かく、樹勢の最盛期は30~40年目となる。
・「サクラ切るバカ、梅切らぬバカ」との有名な言葉があるとおり、非常にデリケートな性質を持つ。剪定すると切り口から腐敗菌が侵入して枯れこむことや、樹勢が弱って花付きが悪くなることがある。
・幹が直立することはなく、成長とともに傘を逆さにしたような樹形になるのが基本であり、その自然樹形を鑑賞する。このため狭い場所には向かない。
・剪定は落葉期に、最低限度の枝を付け根から切除し、切り口に接ぎロウ、石灰硫黄合剤などを塗布して腐食の予防をする。
【ソメイヨシノの品種】
・シダレソメイヨシノ
オオシマザクラとシダレザクラの雑種と推定される品種で、ソメイヨシノの品種ではないが、よく似た花を咲かせる。
【ソメイヨシノに似たサクラ】
ソメイヨシノと同じように花弁の先がへこみ、短い柄に数輪咲くものには以下の種類がある。
カンヒザクラ タカネザクラ
ミシマザクラ アマギヨシノ
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ソメイヨシノの基本データ
【分類】バラ科/サクラ属
落葉広葉/高木
【漢字】染井吉野(そめいよしの)
【別名】ヨシノザクラ
【学名】Prunus×yedoensis
【英名】Somei yosino cherry
【成長】早い
【移植】難しい(幼木は簡単)
【高さ】10~15m
【用途】花木/公園/街路樹
シンボルツリー
【値段】1000円~