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サワラ/さわら/椹
Sawara cypress
【サワラとは】
・ヒノキに似た日本特産の常緑針葉樹で単にヒバと呼ばれることもある。岩手県にある早池峰山以南の本州、四国及び九州北部に分布し、北関東や中部地方に特に多い。枝と枝の隙間が多く、樹形全体が「さはらか(さっぱりの意)」な雰囲気を持つためサワラと名付けられた。漢字名は椹、花粕などが使われ、魚の鰆とは異なる。
・天然のヒノキは溶岩流の跡地や尾根筋など乾燥しやすい過酷な環境に自生するが、サワラは渓流沿いや沢地など湿気の多い場所に見られ、成長はより早い。
・幹は真っすぐに伸び、樹高30~50m、直径1~2.8mにもなる大木であり、庭木よりは材木としての利用が多い。材は針葉樹の中でも格別に柔らかくて軽く、柱などの構造材には向かないが、脂分が多くて水に強い。
・このため桶や風呂桶を作るのに適し、ヒノキのような香りがないこともあって寿司桶や米びつなど食品用の容器にも使われる。ヒノキ、クロベ、アスナロ、コウヤマキと共に木曽五木(江戸時代に尾張藩が管理保護した樹木)の一つに数えられた。
・鱗状の葉はヒノキやアスナロなどとともに、鮮魚や松茸の下に敷く葉(「掻敷=かいじき」という)として使われる。これは葉に含まれる成分(ピシフェリン酸)が酸化防止作用を持つため。葉は長さ3ミリほどの鱗片が十字に集まって生じ、色合いはヒノキよりも薄く、黄色っぽく見える。また、葉の先端は尖り、触れるとチクチクする(ヒノキは先端が丸みを帯び、触れても痛くない)。
・サワラの開花は4月頃で、枝先に地味な花が咲く。雌雄同株で花には雌雄があり、雄花は紫がかった褐色の楕円形、雌花は薄緑色の歪な球形になるが、いずれも小さくて目立たず、観賞価値は乏しい。
・雌花の後には直径6~7ミリの球果ができ、秋(10月頃)には黄褐色に熟す。球果はヒノキ(直径8~15ミリ)よりも小型で、熟して乾燥すると盃状に窪んで凸凹になる点も異なる。種子はヒノキと同様に翼があり、実が開裂すると両端から飛び出す。
・サワラの枝は細く、分岐しながら水平に伸び、先端は少し上向きになり、木全体としては円錐形になる。樹皮は赤褐色または灰褐色でヒノキやスギに似る。樹齢を重ねると縦に裂け目が入って薄く剥がれ落ちるが、その幅は狭く、強度も乏しいためか檜皮葺のような使われ方はしない。
【サワラの育て方のポイント】
・やや湿気のある肥沃な土地を好むが、人工的に作られた苗木はあまり土地を選ばずに育つ。病害虫もほとんど見られない。
・ヒノキよりも耐寒性がやや強く、海抜の高いところ(2,590mまで)や北海道でも植栽できる。
・乾燥にはやや弱く、日差しの強い場所よりも半日蔭くらいの方が生育が良い。
・萌芽力があり、ヒノキほどではないが葉が密生するため垣根に使用できるが、葉を残すように手入れをしないと枯れるため、必然的に年々大きくせざるを得ない。学校や工場など大きなスペースであれば問題は少ない。
・根が浅いこと、葉が密生していることで、やや風に弱い。植え込みの初期は支柱を添えるのが無難。
【サワラに似ている木】
・ヒノキとサワラの違い
上述のとおり葉の先端が尖ってチクチクするのがサワラで、丸みがあるのがヒノキだが、これだけでは判別が難しい。より確実なのは葉の裏を見る方法で、葉の裏面の模様(気孔線)がヒノキは「Y」の字で、サワラは「X」や「H」の字になっている。「X」や「Y」の文字は白く浮き上がって見えるので素人でも難しくない。また、ヒノキは枝葉が密生しているため、木の下に立つと向こうの景色が見えないが、サワラは隙間があって向こう側が見える。
・台湾産のベニヒや北米産のローソンヒノキもサワラによく似ている。
【サワラの園芸品種】
・葉の色形が微妙に異なる多数の園芸品種があり、庭木としては原種よりもそれらの使用が圧倒的に多い。代表的な品種は、ヒヨクヒバ(=イトヒバ)、オウゴンヒヨクヒバ、ヒムロスギ(=サツマヒバ)、チリメンヒムロ、ヒメヒムロ、アツカワサワラ、九十九ヒバ、シノブヒバ、オウゴンシノブ(=ニッコウヒバ)、フイリシノブ、ボールバード(ブールバード)など。
サワラの基本データ
【分類】ヒノキ科/ヒノキ属
常緑針葉/高木
【漢字】椹(さわら)
【別名】サワラギ/オケサワラ/ヒバ
【学名】Chamaecyparis pisifera
【英名】Sawara cypress
【成長】早い
【移植】大木は難しい
【高さ】10~50m
【用途】公園/垣根
シンボルツリー/盆栽
【値段】2000円~