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クロベ/くろべ/黒檜
Japanese arborvitae
【クロベとは】
・本州中北部(秋田から木曽周辺)及び四国に自生する日本固有の常緑針葉樹。中部地方の山岳地帯と日本海側に特に多く、別名をネズコ(鼠子)という。
・名前の由来には、①富山県の黒部渓谷に特に多いことから、②葉の裏側の色がアスナロやヒノキに比べて暗いことから、という二つの説があるが、黒部には特段の関連がなく、漢字表記(黒檜)からすると②の説が有力か。
・葉はヒノキやサワラに似るがより肉厚で、裏面の「気孔帯」と呼ばれる白い部分がそれらほど目立たない。葉の幅は2~3ミリで先端は丸みを帯びる。葉は枝から四方向へ十字型に生じ、ヒノキより大きく、アスナロより小さい。
・クロベの開花は5月頃。雌雄同株で同じ木に黒紫の雄花と黄緑の雌花が咲くが、いずれも小さな粒状で目立たない。年によっては1月頃まで開花が早まるが、雄花は特にその傾向が高い。果実は画像のような球果で、開花した年の秋(9~11月)に熟す。直径は1センチ程度。
・移植に弱いため、元からあったクロベを景観に利用する以外、庭に用いられることは少ない。むしろ、縁台、数奇屋門、待屋など庭まわりのアイテムに材木として使われることが多い。
・幹はまっすぐに伸び、直径は最大で60センチほどになる。江戸時代にはヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキと共に木曽五木として幕府によって厳重に保護された。材にはスギに似た香りがあり、スギと同じように柔らかで木目が真っすぐに通る。
・クロベの材には耐久性もあることから、建具や和風建築の内装(障子、襖、腰板、長押など)、家具や蒸籠(セイロ)に使われ、「雲頭の杢(うんとうのもく)」と呼ばれる木目文様は特に珍重される。ただし、木材としての生産量は少ない。
・樹皮は赤褐色で極めてヒノキに似るが、大木になって剥がれる際の幅がヒノキよりも狭く、全体に滑らかな印象がある。樹皮や心材がヒノキよりも暗い色になること(=黒いヒノキ)を名前の由来とする説もある。
・洋風の庭に使われるコニファーと呼ばれるものの中にはクロベ属に属するものが多い(サンキスト、イエローリボン、エメラルドグリーン、ブルースター、エレガンテシマ、ラインゴールドなど)。
【クロベの育て方のポイント】
・高木であるが成長が遅く、樹形も自然に整いやすい。
・乾燥にも湿気にも強いが、移植に弱く、庭木として新規に植栽するのは難しい。
【クロベに似ている木、見分け方】
葉が大きい順に、アスナロ > クロベ > ヒノキ、サワラとなる。また、ヒノキやサワラのように葉の裏側の気孔線が著しく白くなることはないため区別できる。また、クロベの葉はちぎってもヒノキのような香りはしない。
・アメリカネズコ
材木として輸入されているいわゆる「米杉(ベイスギ)=ウエスタンレッドシダー)」のこと。淡い紅褐色の材が美しく、耐久性も高い。アメリカやカナダの太平洋岸に分布し、原産地では庭木としての利用も多い。
クロベの基本データ
【分類】ヒノキ科 クロベ属(ネズコ属)
常緑針葉 高木
【漢字】黒檜(くろべ)
【別名】ネズコ/ゴロウヒバ
クロベスギ/クロビ
【学名】Thuja standishii Carr.
【英名】Japanese arborvitae
【成長】やや遅い
【移植】きわめて難しい
【高さ】25m~30m
【用途】材木/自然林
【値段】─(庭木としての扱いは稀)