庭木図鑑 植木ペディア > キャラボク
キャラボク/きゃらぼく/伽羅木
Kyara-boku/Dwarf Japanese yew
【キャラボクとは】
・日本海側の山地(鳥海山、氷ノ山、大山及び道後山)に点在する常緑針葉樹で、イチイの変種とされる。イチイとの大きな違いは幹が直立しないことで豪雪地帯に対応したものだが、根元付近で分岐して横に広がる性質を利用し、庭園の垣根などに多用される。
・材に微かな香りがあり、それが希少な香料である伽羅に似ているとしてキャラボクと命名された。伽羅はインドなどの熱帯地方に産するジンチョウゲ科の常緑樹「沈水香木=沈香(じんこう)」から採取される香料のうち、特に優れたもので、かつてはイチイも含めてキャラボクとしていた。
・自生のキャラボクとしては中国地方の最高峰である大山(だいせん)のものが特に有名である。山頂付近には樹齢600年とされる老木が群生し、幹長が15mにも及ぶものがあるという。昭和27年に国の特別天然記念物に指定されている。
・キャラボクの葉は長さ1.5~2.5センチほどの線形で先端が尖る。葉の表面は、新葉では黄緑色、成葉では濃緑色になり、裏面には黄緑色をした2本の気孔帯が走る。イチイに比べると葉は広くて分厚く、触感はより柔らかい。葉は不規則な螺旋状となって枝から生じる。
・雌雄異株で、3~5月に雌雄それぞれの花が葉の基部に咲く。雄株に咲く雄花は、雄しべだけが集まって淡い黄色の球体となり、それなりに目立つが、雌花はかなり小さな緑色~黄褐色で、穴の開いた胚珠とそれを包む鱗片のみからなり、花らしさは全くない。雌花の後には赤い果実ができる。
・キャラボクの果実(正確には仮種皮に包まれた種子)は直径1センチほどの卵形あるいは御椀型で、9~10月頃に熟す。赤い部分は多肉質で食用できるが、中に含まれる褐色の種子は有毒であり、誤飲すると痙攣や呼吸困難を引き起こす。
・成長が遅く、幹の直径は最大でも10センチほどに収まる。樹皮は赤みを帯びた褐色だが、樹齢を重ねると裂け目が入り、古木になると白骨化した枯れ木のような味わい深い姿になる。
【キャラボクの育て方のポイント】
・基本的には日向を好むが日陰にも強く、半日陰程度であれば陰になった枝が枯れるようなこともほとんどない。根は太くて浅く、移植がやや難しいため、植える場所は十分に検討した方がよい。
・肥沃かつ水はけの良い場所を好むが土地に対する適応力は高い。基本的には病害虫の被害がほとんどない。(まれにサズカリムシやハダニの被害に遭う。)
・自生は亜高山~高山の尾根筋だが、イチイに比べて都市部の暑さに強く、庭木としてはイチイよりも広く用いられている。また、寒い地方では冬季に葉が茶変するが、翌年には緑色に戻る。
・木が若いうちは新芽がよく発生し、枝分かれも多い。また、斜め上に伸びる枝が多く、樹形は乱れやすいため、こまめに剪定して樹形を整える必要がある。成長しきったキャラボクは成長が遅く、樹形が乱れにくいため、あまり手間がかからなくなる。
・実は食用になるが、種は有毒であるため、子供やペットが食べないよう留意する必要がある。まめに剪定すれば花や実はならない。
【キャラボクの園芸品種】
・キンメキャラ(キンキャラ)
葉が鮮やかな黄色をしている品種で特に新芽の黄色が美しい。庭の雰囲気が暗くならないため、原種よりも好まれる。黄褐色を帯びるオウゴンキャラボク(金伽羅)もあるが、見分けは難しい。
【キャラボクとイチイの見分け方】
・キャラボクの葉が四方八方へ螺旋状に発生するのに対し、イチイは二列に水平に並ぶ。(ただし枝先にある葉は螺旋状になる)
・キャラボクは放置すると樹形がクネクネと乱れるが、イチイはスッキリと端正な姿を保つ。
一般的に寒い地方にはイチイ、暖かい地方にはキャラボクが適するが、庭木としては背が高くなりにくいキャラボクの方が好まれる傾向にある。なお、関西に多いイチイガシ(ブナ科)をイチイと呼ぶ地方もあるが、このイチイとは関係がない。
キャラボクの購入なら |
キャラボクの基本データ
【分類】イチイ科 イチイ属
常緑針葉 低木
【漢字】伽羅木(きゃらぼく)
【別名】キャラ/ハイキャラボク
ダイセンキャラボク
【学名】Taxus cuspidata var.nana
【英名】Kyara-boku
(Dwarf Japanese yew)
【成長】かなり遅い
【移植】難しい(十分な根回しが必要)
【高さ】1m~3m
【用途】垣根/トピアリー/玉散らし
【値段】1000円~