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カヤ/かや/榧
Torreya/Japanese nutmeg-yew
【カヤとは】
・宮城県以南の太平洋側を原産とするイチイ科の常緑針葉樹。韓国の済州島にも分布するが、屋久島より南には見られない。成長は遅いものの樹齢が長く、種子から採取する油を燈明に用いたため、各地の神社仏閣等に巨木が残る。ちなみに「茅吹屋根」などに使う茅(萱)は草であり、本種とは関係がない。
・薄暗い場所でもピカピカ光るカヤの葉はイチイに似るが、先端が鋭利で触れると痛い。これをいぶして「蚊帳」に用いる(これが語源という説もあるが古名はカヘ)。葉は長さ2~3センチ、幅2~3ミリ程度の扁平した線形で、若い枝や縦の枝では螺旋状に生じ、横枝では互い違いで左右二列に並ぶ。葉の表面は濃緑で、裏面には2本の気孔帯と呼ばれる白い線があるため、遠目には淡い緑色に見える。
・現代では珍しい庭木に属するが、枝葉、果実、材の活用性が高く、かつては農家の庭先に好んで植栽された。また、大気汚染に強いことや、移植に強いことなどから最近、その価値が見直され、公園等に植えられるようになった。
・カヤの樹皮は赤褐色あるいは灰褐色で、樹齢が低いうちは滑らかだが、年を経るにつれて縦に浅く裂ける。大きな木では直径が2.5mにもなるが成長はかなり遅い。材は緻密で狂いが少なく、淡いクリーム色の柾目が美しいことや、独特の艶と甘い芳香があることから建築、櫛などの器具、家具や彫刻に重用される。
・樹齢300年以上のカヤで作った碁盤や将棋盤は高級品とされ、特に南九州の「日向榧」は名高い。材はシロアリや水に強く、建築の土台や浴室用材にも用いられ、また、平安から鎌倉時代に関東で作られた仏像の多くはカヤを材料としている。
・カヤの開花は4~5月。雌雄異株でいずれも前年に伸びた枝に咲く。雄株に咲く淡い黄色の雄花は直径1センチほどの楕円形で、開ききると小さなヒマワリが集まったような感じになる。雌株に咲く雌花は緑色の粒状で新芽の基部に咲くため分かりにくい。
・一般的にはカヤの実というが、カヤは裸子植物であり、果実に見えるもの全体が種子となる。直径2~3センチ程度の楕円形で、でき始めは緑色だが開花翌年の9~10月頃になると紫がかった赤茶色に熟し、硬い殻に覆われていた内部(核果)が自然に現れる。種子には油脂が豊富に含まれ、灯油、整髪料、塗料、てんぷら油、そして寄生虫の駆除に使われた。
・種子には独特のヤニ臭さがあるものの、灰汁ぬきして天日にさらしたものを炒めれば、ピスタチオやアーモンドよりも香りの高いナッツになり、戦後は食糧難を支える果実となっていた。縄文及び弥生時代の遺跡からも保存されたカヤの実が出土しており、古い時代には朝廷に献上された記録もあるなど日本人との関係は古い。種子の胚乳はそのまま食べることができ、これを用いたカヤアラレなどの銘菓がある。
【カヤの育て方のポイント】
・耐寒性はあるものの、庭木として扱う場合、東北南部あたりが北限とされる。日陰や大気汚染に強く、土壌もあまり選ばないため、都市部の植栽にも使用できる。
・成長は遅いが、萌芽力は強く、剪定して管理することは可能。ただし枝は不揃いな上、触ると痛いため形を作りにくく、切った枝の処理にも手間がかかる。
・雌雄異株であり、種子を採取するには雌の木を植える必要がある。
【カヤの品種】
【カヤに似ている木】
・イヌガヤに似るが、イヌガヤの葉は触れても痛くない。また、イヌガヤの葉はカヤよりも長い。カヤとイヌガヤの別を強調するため、カヤをホンガヤと呼ぶこともある。
カヤの基本データ
【分類】イチイ科/カヤ属
常緑針葉/高木
【漢字】榧/栢
【別名】ホンガヤ/シロガヤ/バイ
【学名】Torreya nucifera
【英名】Torreya
Japanese nutmeg-yew
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【高さ】15m~35m
【用途】シンボルツリー/公園
工場/寺社
【値段】1500円~