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オガタマノキ/おがたまのき/小賀玉木
Japanese Banana bush
【オガタマノキとは】
・本州南部(関東以西)からフィリピンにかけて分布するモクレン科の常緑樹。日本に見られるモクレンの仲間では唯一の常緑性で、暖地の海辺に近い山林に育つ。
・かつては床材、床柱及び家具材として使われたが、移植や繁殖が難しく、現在では庭木としての流通もほとんどない。
・日本で最も重要な神とされる天照大神が岩戸屋に隠れ、世界が闇に包まれた際、アマノウズメノミコトがこの枝を持って踊り、天照大神を外へ誘い出したという。これもあってかオガタマノキは古来から神聖視され、伊勢神宮をはじめ神社仏閣の御神木とされることが多い。
・葉を神前に供え、神霊を招くために使われたことから「招霊(オキタマ)」、これが転じてオガタマノキと名付けられた(諸説あり/漢字表記は「小賀玉」とも)。
・神前に葉を供える木は他にもサカキ、タブノキ、ヤブニッケイなどがあるが、本来は本種を用いる(諸説あり)。
・オガタマノキの開花は3月下旬~4月上旬。花の直径は2~5センチほどでモクレンやコブシよりも小さく、枝葉に隠れるように一輪ずつ咲くため目立たない。
・花弁と花弁のような萼が計12枚あり、それらの基部は紅紫になる。雄しべと雌しべは多数。芳香が強いとする資料もあるが、近縁種カラタネオガタマほどの強い香りはない(個体差あり)。
・オガタマノキの葉は長さ8~14センチの長楕円形で、枝から互い違いに生じる。表面には光沢があり、裏面は細かな毛が多いため白っぽく見える。
・葉の雰囲気はマテバシイに似ており、縁が波打ったマテバシイという感じ。樹形は壮大で、放任すれば全体として半球形になる。
・枝葉には微香があり、葉から香料を採取できるため「小香木」、弘法大師がこれを香木として焚いたため「大師香(ダイシコウ)」という別名がある。
・10月頃になると球形の果実が多数集まって、長さ5~10センチの房状になる。果実に含まれる2~3個の種子は赤くてよく目立つが、熟して落下する頃には黒く、やや見苦しくなる。
・樹皮はやや緑がかった灰色。皺や皮目は少なく滑らか。樹高は最大15mほど、幹の直径は1mほどになる。
【オガタマノキの育て方のポイント】
・日向を好むが半日蔭でも育つ。ただし暖地の生まれであり、寒さには弱く、関東以北では育てるのが難しい。茨城県南部が北限とされる。
・開花、結実は珍しくないが、実生による繁殖や移植は難しい。
・成長が早めで大木となるが、剪定や移植には弱い。一般家庭にはカラタネオガタマが向く。
【オガタマノキの品種】
・ホソバオガタマノキ(細葉)、ヒロハオガタマノキ(広葉)
国産オガタマノキの変種で文字どおり葉の形が微妙に異なる。
・四季咲きオガタマ
春と秋の年二回、開花する。
・ウンナン(雲南)オガタマノキ
中国雲南省を原産地とする種類で、より大きな花を咲かせる。樹高は4m程度にしかならず、オガタマノキよりは管理しやすい。
【オガタマノキに似ている木】
・ミケリア
同じ中国産の常緑モクレン。ミヤマガンショウを始め複数の品種があるが、名前が覚えにくいためか庭木としてはあまり普及していない。
トウオガタマ、バナナノキとも呼ばれる常緑樹。花は小さいが、オガタマノキほど大きくならず、香りがより強いため一般家庭の植栽に使われる。ネット上ではカラタネオガタマをオガタマノキと呼ぶことも多く、混乱を来している。
台湾やインドで庭木として使われる常緑樹。非常に香りの高い花が咲き、ミツバチさえもその香りで落下するという。寒さに弱く、日本での露地植えは難しい。
オガタマノキの基本データ
【分類】モクレン科 オガタマノキ属
常緑広葉 高木
【漢字】小賀玉木(おがたまのき)
【別名】トキワコブシ/オガタマ
ダイシコウ(大師香)
【学名】Michelia compressa
【英名】Japanese Banana bush
【成長】やや早い
【移植】難しい
【高さ】10m~15m
【用途】公園/神社
【値段】1500円~