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ナンテン/なんてん/南天
Nandina
【ナンテンとは】
・茨城県以西の本州、四国及び九州に分布するメギ科ナンテン属の常緑低木。和風庭園の定番であり、赤い果実や紅葉を観賞するため、古くから庭木、盆栽、正月の床飾りなどに多用され、江戸時代には数多くの品種が作出された。日本以外では中国やインドに自生。
・ナンテン属の木は他になく一属一種の木とされる。山口県萩市川上には国の天然記念物に指定されるナンテンの自生地があるが、日本に生えるナンテンの起源は不詳であり、中国中南部及びインドの暖地にあったものが薬用として持ち込まれ、その後に野生化したとする説や、空海が唐から持ち帰ったナンテンの杖を石垣に突き刺したものが根付いたとする伝説などがある。
・ナンテンという名前は、中国名の「南天燭」あるいは「南天竹」を略して音読みしたもの。「南天燭」は食堂の灯りを意味し、果実に野鳥が集まることに由来。「南天竹」は複数の幹が乱立する様を、タケに見立てたもの。
・日本では漢字の読みが「難転」に通じるという語呂合わせにより、江戸時代から縁起の良い木とされ、火災除けや魔除けのため玄関先、トイレ付近、鬼門の方角に植えられ、その名残が今日でも各地に見られる。
・ナンテンの葉は長さ3~7セン革質でチ、幅2センチ前後の菱形をした小葉が集まって、長さ20~50センチの大きな羽根状になる。小葉は革質で先端が尖り、表面はやや光沢のある濃緑色になる。常緑樹であり紅葉はしないが、冬季に寒さにあたると葉の一部が赤く色付いて美しい。
・赤飯や魚料理などの重箱にナンテンの葉が添えられるのは、葉に含まれるナンジニンという成分が熱と水分に触れると、防腐作用のあるチアン水素を僅かに発生するため。かつてはトイレの手水鉢近くに植えて、ペーパータオル代わりにしていた。乾燥させた葉を煎じたものは、うがい薬、として口内炎や扁桃炎に、また、強壮剤としても利用される。
・ナンテンの葉は吉凶どちらにも使われるが、祝い事の赤飯であれば葉を表向きに、仏事には葉を裏にして使うという習わしがあった。また、かつては武将が出陣する際、床にナンテンを生けるという風習があったという。
・ナンテンの開花は初夏(5~6月)で、枝先に伸びた円錐状の花序(花の集り)に、白い小花が多数集まって咲く。花は長さ6ミリほどで雌しべの周りに6個の雄しべがあり、その先端にある葯は黄色い。花弁も6枚あるが、6枚が咲き揃うと外側の3枚は脱落するため、満開の花を見るのは難しい。
・10~11月に熟すナンテンの実は直径6~7ミリの球形で、種子が二粒入る。果実にはアルカロイドの一種であるナンテニン(ナンジニン)が含まれ、乾燥させたものは漢方薬「南天実(なんてんじつ)」として咳止めや喉飴に使われる。花の少ない時季にできる赤い実はよく目立ち、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキなどの野鳥がこれを採食する。
・果実は熟すにつれて赤から黒になるため、岐阜県郡上市八幡町では赤字が黒字に転じるという縁起を担いだ巨大な「南天玉」が作られ、正月飾りに使われる。
・株立ち状に育つが枝分かれは少なく、まっすぐに伸び、放任すれば樹高5mを超えることもある。樹皮は灰褐色~灰白色で、これにも抗菌作用があり、ナンテンの材で作った南天箸は不老長寿あるいは中風(身体の麻痺)除けや虫歯に効果があるとされ、寺院など販売される。ただし箸に実用性はなく、縁起物の装飾品として扱うのが普通(南天箸にはイイギリの材を使うという説もある。)
・幹の直径は通常2~3センチだが、複数の幹が癒合して直径10センチほどになったものは、金閣寺(夕佳亭)や帝釈天に見られる格調高い床柱になる。材は黄色く、剪定の切断面も黄色になる。
【ナンテンの育て方のポイント】
・暖地に自生し乾燥にも強いが、日差しの強い場所では葉の色が悪くなるため、湿気のある半日陰に植えるのがベスト。また、移植を嫌うため植える場所はよく吟味した方がよい。
・開花期は梅雨時だが、花は雨を嫌い、大量の雨に当たると実のつきが悪くなる。また、できたての実は堅いため、鳥が食べることはないが、季節を経て熟せば柔らかくなり、周辺環境によっては、せっかくの実も、あっという間に食べられる。ナンテンの実を食べるのは主にヒヨドリ。
・剪定は可能だが、基本的には剪定を嫌うため、樹形を整える最低限にとどめなければ、生育が悪くなる。枝葉の途中で剪定すると葉の付け根まで枯れこむため、剪定後の姿はイメージしにくい。
・病害虫に強いが、根が浅く、なおかつ頭でっかちに育つため、風の影響で倒れやすい。
【ナンテンの品種】
・キンシナンテン(錦糸南天)
細い葉が糸状になっている品種で、江戸時代に流行した。
背丈が大きくならず、真夏と真冬以外は葉が赤くなるため、公園、庭園、商業施設などでよく使われる人気のある品種だが、ナンテンのような実はならない。ナンテンに比べて丸みを帯びた葉の様子をオタフクに擬えて命名された。
・シロミ(白実)ナンテン
実がクリーム色の品種。実の色は白とも黄色ともいえず、シロナンテン、シロミノナンテン、キミノナンテンといった呼び名もある。普通の南天と一緒に植えれば紅白の実がなるとして縁起を担ぐ。紅葉しないのが特徴。かつては普通のナンテンよりも薬効が高く、特に眼病に特効があるとして珍重されていた。
・オリヅル(折り鶴)ナンテン
撚れた葉が密生する珍品で、高級品とされる。葉の様子を折り紙の鶴に擬えて命名された。
・ナンテントワイライト
アメリカで生まれた新しい品種。緑の葉に白い模様が入ることに加え、新葉がピンク色になり、三色のハーモニーが美しい。そして背丈もオタフクナンテンと同程度にとどまるため、ナンテンは古臭いという世代にも受け入れられる。
このほかにも薄紫色(藤色)の実がなるフジミナンテンやオレンジ色の実がなるウルミナンテン、葉が小さくて果実が垂れ下がらないシナナンテンなどがある。
【ナンテンに似ている植物】
ナンテンの基本データ
【分類】メギ科/ナンテン属
常緑広葉/低木
【漢字】南天(なんてん)
【別名】ナツテン/ナルテン
南天竹/ナイテン/ナデン
南天燭(ナンテンショク)
【学名】Nandina domestica
【英名】Nandina
Heavenly bamboo
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【高さ】1~4m
【用途】和風庭園/公園/生け花
【値段】800円~