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トベラ/とべら/海桐
Cheesewood tree
【トベラとは】
・岩手県以南の太平洋岸、新潟県以南の日本海岸、四国、九州及び沖縄に分布するトベラ科トベラ属の常緑低木。庭園や公園などに使われることも多いが、自生地は日当たりのよい海岸沿いの斜面など。海辺の地域では防砂林や防風林として、また枝葉をヒイラギ代わりに節分や大晦日の厄除けに使うことでも知られる。
・厄除けの使うのは木全体に臭気があるためで、トベラの枝にイワシを刺すなどして家の扉に挟み、臭いによって鬼を退散させ、邪気を払う。このため、トビラの木=トベラと名付けられた。実際にはそれほど困惑するような匂いではないが根の皮は臭く、枝葉も燃やすとそれなりに匂う。
・トベラの葉は枝から互い違いに生じるが、枝先付近では車輪状に集まる。長さ5~10センチの長楕円形で先端は丸く、基部はクサビ形になる。縁にギザギザはないが、葉の縁が裏面に反り返るようになるのが特徴。表面は深緑色で光沢があり、裏面は淡い緑色。肉厚な葉だが光に透かすと葉脈がよく見える。
・葉を火にかけるとバリバリと大きな音が出るという特徴があり、この音にも鬼(邪鬼)を退散させる効果があるとして、地方によっては節分の豆を煎る際にトベラの葉を燃やす「トベラ焼き」を行う。
・トベラの開花は4~6月。雌雄異株で雄木には雄花を、雌木には雌花を咲かせる。花はその年に伸びた枝先で上向きに咲き、白から黄色に変化するという特徴を持つ。5枚ある花弁は長さ1センチほどのヘラ形。雄しべは5個で雄花では長さ7ミリほどになるが、雌花の雄しべはより短くて葯も小さい。
・花には微香もあるが、花を楽しむために積極的に植えられるような木ではない。性質が丈夫であることから、道路沿いの緑化に使われることが多い。
・花の後には直径1.5センチほどの果実がなり、11~12月には灰黒に熟して3つに決裂し、中から粘りのある赤い種子が多数現れる。糸を引いたようなグロテスクな種子で食用にならないが、ムクドリやメジロなど一部の野鳥はこれを採食する。
・樹皮は赤みを帯びた灰褐色で滑らか。材や根の皮を燃やすと、より一層の悪臭を放つ。
・日本以外では韓国、台湾及び中国本土南部など温暖な地方に分布する。中国名は「海桐」で材の色がキリに似ることに由来する。
【トベラの育て方のポイント】
・剪定に強く、枝がよく分岐するため垣根として利用しやすいが、剪定すると枝葉がゴツゴツして見苦しくなることも。普通は高さ3m程で収まるが、環境が良ければ10mを超す高木になる。
・海辺での自生が多く、潮風、乾燥、大気汚染に耐え、砂地にも育つ。日照を好む陽樹だが、日陰にも比較的耐える。
・病害虫には強いが、寒さにはやや弱い。
・花はその年に伸びた枝先に咲くため、春以降に剪定すると花が咲かない。
【トベラの品種】
・斑入りトベラ
葉にクリーム色の模様が入る品種。明るい雰囲気になるため園芸用に出回り、洋風の庭にも利用しやすい。
・シマトベラ
オーストラリア東部や小笠原諸島に分布するトベラ科トベラ属の常緑高木。トベラよりも葉は大きく、縁は明らかに波打つ。
・コバトベラ
小笠原諸島の父島にのみ天然分布する絶滅危惧種。「コバ」は「小葉」で、画像のとおり葉は小さくて丸みを帯びる。
【トベラに似ている木】
トベラとはほとんど関係のない木だが、葉の様子や植栽される場所が似ており混同しやすい。
マメ科の常緑樹で山地の林内に見られる。トベラに似るとされる葉はより大きくて光沢があり、秋に黒い実ができる。
・コヤスノキ(子安の木=安産祈願に使う)
同じトベラ科トベラ属だが、兵庫及び岡山の一部のみに分布する。トベラの葉先が丸みを帯びているのに対して、コヤスノキは尖っている。また、トベラの小枝に見られるような毛がない。
トベラの基本データ
【分類】トベラ科/トベラ属
常緑広葉/低木~小高木
【漢字】海桐/海桐花/扉(とべら)
【別名】トビラ/トビラギ
トビラノキ/トベラノキ
バリバリシバ
【学名】Pittosporum tobira
【英名】Cheesewood tree
【成長】早い
【移植】やや難しい
【高さ】2m~10m
【用途】垣根/公園/防風林/街路樹
【値段】500円~