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シオン/しおん/紫苑
Tatarian aster
【シオンとは】
・九州と中国地方に分布するキク科の多年草。自生は山間の草地で、草丈2mを超える存在感を持ち、淡い紫色の花も見栄えがいいため、秋を代表する草花として「源氏物語」の時代から愛される。日本以外では中国(北部、東北部)、朝鮮半島、モンゴルに分布。
・放任しても毎年花を咲かせるため、現代でも観賞用に庭植えされることが多い。根が紫色を帯び、生薬としての漢名「紫苑」の音読みから、シオンと呼ばれる。
・自生地としては阿蘇山の原野が知られるが、平安時代以前に薬用としてシベリアあるいは中国から渡来したものが野生化したとする説もある。別名はジュウゴヤソウ(十五野草)、オニノシコグサ(鬼の醜草)など。
・開花は9~11月で、茎の頂部に複数の小枝を出し、多数の小花を咲かせる。小花は直径3センチほどで、花弁に見える舌状花は淡い紫色で先端が尖り、よく見ると短毛が密生する。花の中央にある管状の小花(冠状花)は黄色く、花に彩りを添える。
・シオンの葉には二通りあり、株元から生じる「根生葉」は大型で柄があり、群がるように直立する。一方、茎から互い違いに生じる「茎葉」は小さめで柄がなく、上へいくに従って幅が狭くなる。茎は直立して高さ1.5~2mに育つが、台風で倒れかけても復活しやすい。茎葉ともに表面に毛を生じる。
・植物としての漢名は「青苑」だが、生薬名は「紫苑(しおん)」で、古くから民間薬として咳止めや痰切りに用いられる。薬用にするのは10~11月に掘り出した根で、乾燥させて煎じたものを飲用するが、これには特異な臭気があり、舐めると始めは甘味が、後に渋味がある。
・シオンが薬用されるのはサポニン(シオンサポニン)を含むため。慢性の咳や痰に血が混じるような慢性気管支炎、肺結核などの症状に効果があるとされ、今日でも生薬として使われる。
・「今昔物語」には両親を亡くした兄弟のうち、悲しみを早期に忘れようと兄がワスレグサを植え、弟が記憶にとどめたいとしてシオンを植えたところ、鬼が薄情な兄を没落させたという寓話がある。
【シオンに似ている草花】
シオンほどではないが草丈大きく、同じ頃に白い花を咲かせる。
・ゴマナ
・チョウセンシオン
朝鮮半島を原産とする近縁種。夏~初秋に青紫の花を咲かせるが、シオンよりはミヤマヨメナに近い印象がある。別名はチョウセンヨメナ。
シオンの基本データ
【分 類】キク科/シオン属
多年草
【漢 字】紫苑(しおん・しをん)
【別 名】ジュウゴヤソウ(十五野草)
オニノシコグサ(鬼の醜草)
返魂草
【学 名】Aster tataricus
【英 名】Tatarian aster
【開花期】9~11月
【花の色】淡い紫
【草 丈】~200cm