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バショウ/ばしょう/芭蕉
Japanese banana
【バショウとは】
・中国南部の暖帯~亜熱帯を原産とするバショウ科の多年草。バナナの仲間としては最も耐寒性があり、南国風の葉を観賞する観葉植物として古くから庭園や寺院を中心に植栽される。
・バショウが日本へ渡来したのは平安時代で、文献上は古今和歌集に登場したのが初とされる。
・バショウという名前は古名のハセオ(発勢乎)またはハセオバ(発勢乎波)が転訛したものとされる。葉が風で破れやすいこと、寺院に多く縁起が悪いことから庭忌草(ニワキグサ)という別名があるものの、かの有名な俳人である松尾芭蕉は、門徒から寄贈されたバショウの株が立派に育ち、自身の庵の名物になっていたことにちなんで芭蕉と名乗った。
・幹や茎のように見えるのは、堅くなった葉の鞘(さや)=葉柄の基部が交互に重なり合ったもので、「偽茎」と呼ばれ、高さ4~6m、直径20センチほどになる。沖縄(琉球王国)では同地に産するイトバショウ(リュウキュウバショウ)の繊維を利用し、かの地を代表する織物である芭蕉布や紙を作った。
・葉は日本の露地で栽培される植物として最も大きく、長さ1~3メートル、幅40~60センチにもなり、かつては食物をこの葉に包んで焼くなどして調理に用いた。
・でき始めの幼い葉は新品の模造紙を巻いたような感じで偽茎の中心に直立するが、やがて四方に広がる。葉が徐々にほぐれていく様は「玉巻く芭蕉」「玉解く芭蕉」、新葉が開いた様は「青芭蕉」「夏芭蕉」と呼び、夏の季語とされる。
・葉の表面は鮮やかな緑色で、裏面にはバナナの葉に見られるような白い粉がない。主脈は裏側に高く隆起し、直角に交わる側脈は規則正しく並ぶ。葉は秋になると破れ、枯れた状態で春を迎える。その姿は無残ではあるが「破れ芭蕉」「枯芭蕉」として多くの句に詠まれる。
・開花は7~11月で、開花期になると腕位の太さをした緑色の花茎が70~80センチほど伸び、黄褐色の苞葉に包まれた花が現れる。雌雄同株であり、偽茎に近い下部に雌花が、上部には雄花が咲く。
・花はクリーム色をした唇形で、長さは5~7センチほど。開花は稀であり、かつては仏教において3000年に一度咲き、最高におめでたいことを意味する「優曇華(うどんげ)」に擬えて珍重した。
・果実は長さ7~8センチのミニバナナ風だが、中に大きめの黒い種子が入っていることや渋味が強いことから追熟しなければ食用にならない。
・バショウの根は巨大な塊になっており、下に伸びて株を支える根と、横に広がって新たな株(子株)を作る根に分かれている。
【バショウの育て方のポイント】
・土質を選ばず丈夫に育つが、大型かつエキゾチックであるため、一般家庭での利用は難しい。他の庭木との寄せ植えは馴染まず、本種のみを列植して観賞するのがよい。
・関東地方以南であれば庭に植えて越冬できるが、木ではなく草の仲間であり、四国や九州南部以外では冬に地上部が枯死し、翌年の春に発芽する。また、寒い地方では花や実がならない。
【バショウの品種】
・三尺芭蕉
葉や草丈の小さい矮性品種で、稀に生け花などに使われる。
・イトバショウ(糸芭蕉)
中国や東南アジアを原産とする品種。沖縄にも分布することからリュウキュウバショウともいう。花を包む苞がピンクあるいは赤紫になるのが特徴で、上記の芭蕉布はこの品種を用いる。
【バショウに似た植物】
・ウコン
・チユウキンレン
中国雲南省を原産とする耐寒性の多年草。バショウに似た性質を持ち、ハスのような黄色い花(苞葉)が地面から湧き出るように咲くため、「地湧金蓮(ちゆうきんれん)」と名付けられた。英名はチャイニーズイエローバナナ。
バショウの基本データ
【分類】バショウ科/バショウ属
落葉性大型多年草
【学名】Musa basjoo
【別名】ハセオバ/ニワキグサ
【成長】早い
【移植】困難(株分けは可能)
【用途】寺院/大きな庭園
【値段】5,000円~