庭木図鑑 植木ペディア > ヤシ類ほか特殊樹木
キミガヨラン/きみがよらん/君ヶ代蘭
Commonn yucca
【キミガヨランとは】
・北米西南部~メキシコ西海岸を原産とする常緑低木(あるいは多年生常緑性低木状の草本)。日本へ渡来したのは明治時代の中期で、高くそびえ立つ優雅な花を観賞するため、主に洋風の庭園や公園等に植栽される。昭和時代までは多用されたが、性質が丈夫過ぎるため、時に駆除の対象とされることも。
・一般的には本種及び近縁のアツバキミガヨランを合わせて「ユッカ」、あるいは「ユッカラン」と呼ぶことが多い。しかし「ユッカ」は北米~中南米に分布するリュウゼツラン科の植物約40種の総称であり、ユッカという植物はない。日本には本種、アツバキミガヨラン、イトラン、センジュランなどが植栽されている。
・葉は長さ60~80センチ、幅4~5センチの剣状。リュウゼツランに似るが棘はない。葉は幹の上部から束になって生じ、四方に広がる。多肉質だがアツバキミガヨランよりは薄いため、下方の葉は半ばで折れて垂れ下がる。葉の表面は灰色がかった緑色で毛はなく、縁は黄色く縁取られる。
・キミガヨランの開花時期は、5~6月と10~11月の年2回で、夕方から夜にかけて開花する。葉の中心部から伸びる太い花茎は1~2mにもなり、そこに大きな卵形の花が数十輪、円錐状に並んで下向きに咲く。
・花の直径は3~5センチ。6枚ある白い花弁の外側には紫色を帯びた模様が入る。原産地ではユッカガという独特の蛾によって花粉が媒介、受粉されるが、日本では開花しても結実しないため、挿し木や株分けで増やす。
・幹は単独で直立するもの、上方で分岐するものがあるが、全体としては大きな傘を逆さにしたような樹形になる。
【キミガヨランの育て方のポイント】
・関東以西であれば屋外で越冬、地植えできる。東北地方以北では冬季に葉を巻くなどして防寒対策を施す必要がある。
・原産地は海辺が多く、耐潮性や耐乾性が高いため、海岸沿いや大気汚染のある都市部でも育てられる。土質もほぼ選ばない。
・性質はかなり丈夫であり、伐採した個体を放置していても根を生じる。また、少しでも根が残っていれば地上部を伐採しても復活するため、一度植えると駆除するのが難しい。
・葉はツルツルしているが先端は鋭く、手で触れるとチクチクするため、人通りのある場所への植栽は避けたい。また、枯葉がなかなか落下せず、見苦しく幹に残るため定期的に剪定して整理した方がよい。
【キミガヨランの品種】
・アツバキミガヨラン(=ユッカラン=アメリカキミガヨラン)
北米南部を原産とする近縁種で、本種同様、明治時代に日本へ渡来した。本種との違いは、名前のとおり葉が厚くて下垂しないこと、葉の幅がより広いこと、花がより大きいことなど。キミガヨランよりも花が豪華で、植栽される数が多い。
【キミガヨランに似た植物】
・センジュラン(チモラン)
アメリカのノースカロライナ州、メキシコ東部、ジャマイカなどに分布する常緑性の中高木。小さな葉が多数生じることから「千手蘭」と名付けられた。葉色にバラエティがあり、特に葉の模様が美しいものをキンポウラン(錦鳳蘭)と呼んで珍重する。花はキミガヨランとほぼ同じだが、こちらは結実する。
・イトラン
キミガヨランと共にユッカと呼ばれる種で、アメリカの砂漠地帯に自生する。葉の縁が糸のように白く剥がれるため糸蘭と呼ばれ、キミガヨランに似た白い花を毎年咲かせる。
キミガヨランの基本データ
【分類】リュウゼツラン科
イトラン属(ユッカ属)
常緑低木
【学名】Yucca recurvifolia Salisb.
【別名】ユッカ/ユッカラン
【成長】早い
【移植】困難(元の場所にも生じる)
【用途】洋風庭園/公園/生け花
【値段】2,000円~