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サルスベリ/さるすべり/百日紅
Crape myrtle
【サルスベリとは】
・中国南部及びインドを原産とするミソハギ科サルスベリ属の落葉高木。日本に自生はないが全国の街路、公園及び庭園等に多数植栽される。成木の幹は樹皮が剥げ落ちてツルツルしており、木登りが得意な猿さえも登るのが難しいとして「猿滑り」と名付けられた。
・花が少ない夏季の貴重な花木であり、梅雨明けから初秋までの長い期間に渡って花を楽しむことができるため「百日紅(ヒャクジッコウ)」という別名がある。個別の花期は2か月ほどだが、他の庭木に比べれば格段に長い。花の径は3~4センチ。花色はピンク、白、赤、藤色などで品種によって異なる。
・サルスベリが日本へ渡来したのは元禄年間(江戸時代)以前とされる(諸説あり)。当初は寺院など仏教関連の施設に植栽されることが多かったが、これは幹の雰囲気が日本で沙羅の木としているヒメシャラやナツツバキに似ているため。
・一部の地方では、ヒメシャラやナツツバキ、あるいは同じような幹になるリョウブのことを方言でサルスベリと呼ぶが、これはサルスベリが日本へ渡来する前に誤認されていた名残。なお、サルスベリの幹がそれらしくなるのは植え付け後、7,8年経過してからのこと。幹の直径は最大で30センチほどになる。
・花は枝先に伸びた円錐状の花序に多数生じ、下から順に咲き上がる。雌雄同株で、縮れた6枚の花弁は扇形。それに囲まれるように1本の長い雌しべと多数の雄しべがある。最も目立つのは先端(葯)が黄色くて短い雄しべだが、これは虫をおびき寄せる見せかけのもの。実際に生殖能力を持つのは、周辺部にある長い6本の雄しべで、その先端は紫色っぽい。
・花の後にできる果実は直径7ミリほどの球形。秋(11月頃)に熟すと6つに裂け、長さ4ミリほどの種子が現れる。種子の上部には翼があり、これによって拡散されるが、稀にマヒワやカワラヒワなどの渡り鳥が採食する。
・葉は長さ5センチ前後、幅2~3センチの丸みのある楕円形で縁にギザギザはなく、イボタノキに似る。葉の先端が尖るもの、尖らないものがあり、葉の出方も枝によって異なる。若い枝では葉が対になって生じるが、多くはコクサギと同じように2枚単位で左右交互に生じる。両面とも無毛で葉柄はほとんどない。秋に黄あるいはオレンジ色に紅葉する。
・材は硬質かつ緻密であり、幹と同じようにすべすべしている。曲がりくねった様子に趣があり、耐久性も高いため、皮つきのままで床柱や杖、コマやけん玉などの玩具に使われる。
・サルスベリの近縁種には、屋久島に見られるヤクシマサルスベリや台湾などの亜熱帯に自生するシマサルスベリがあり、両方とも白い花を咲かせる。サルスベリの園芸品種はこれらを掛け合わせたもので、花の色は白、ピンク、赤、紫がある。最も数多く植栽されているのはインディカという品種。
【サルスベリの育て方のポイント】
・乾燥や潮風に強く、丈夫な性質を持つが、代表的な「陽樹」であり、植え場所は日向に限る。また、基本的には暖地性であるため寒さの厳しい土地では防寒対策が必要。
・木の様子は南国風で自己主張が激しいため、他の木と混ぜて植えることはできない。庭の手前や玄関付近に単独で植えるのが一般的。
・花の鑑賞を目的に植栽されるが、枝は上方で大きく開くように育ち、上手に剪定すれば、年を経るにつれて味わいを増す枝ぶりを楽しむことができる。町中で目にするサルスベリの多くは下の画像のようなコブ状だが、これは作業効率を考えて毎年同じ箇所で剪定したもので、本来の姿ではない。
・花はその年に伸びた枝先に咲くため、春から夏にかけて剪定すると花数が少なくなる。剪定の適期は落葉期で、冬の間であれば太めの枝も剪定できる。花付きはよく、どこで切っても翌年には花が咲く。また、挿し木で容易に増やすことができる。
・成長が早く、放任して育てると枝葉が混み合って風通しが悪くなり、スス病、うどんこ病(写真)、カイガラムシなどの被害に遭いやすくなる。枝抜きをして通風を良くするか、消毒をする必要がある。
【サルスベリの品種】
花期が長いため一般家庭の庭にも使われるが、近年ではあまり背丈が大きくならない品種や葉の黒い品種などの人気が高い。
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サルスベリの基本データ
【分類】ミソハギ科/サルスベリ属
落葉広葉/小高木
【漢字】百日紅/猿滑(さるすべり)
【別名】ヒャクジッコウ
ヒャクジツコウ(百日紅)
センニチコウ(千日紅)
サルナメリ/クスグリノキ
【学名】Lagerstroemia indica
【英名】Crape myrtle
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】3~10m
【用途】花木/公園
【値段】800円~